部下との絆づくり
自分勝手で非を認めない支配型のリーダーは部下から信頼されません。その為、彼が率いる組織では退職者が増え、業績も伸び悩みます。一方、部下との絆づくりに真摯に取り組むリーダーの下では、部下は生き生きと働き成果を出す人材を輩出します。
自己肯定感の低い部下との絆づくり
A店長は以前、相手の状況を理解せず、自分の考えを押し付け、カッとなって怒鳴ることもありました。しかし、若いスタッフの退職が続いたことで、部長からの指摘を受け、部下に寄り添い、信頼関係を築くことを決意しました。そして、冷静な態度で部下との相互理解を深め、毎朝笑顔を練習し、怒りの感情が湧いた時は10秒数えて気持ちを鎮めることを実践したのです。
以前やる気のない態度に腹を立て、怒鳴ってしまったCさんと個別面談し、生き様インタビューを実施しました。まずその行為を詫び、自己革新に取り組んでいると話しCさんの最近の状況や悩みを聴いたのです。Cさんは店長とそんな話をするのは初めてで戸惑っていましたが、徐々に心を開き、最近妻の体調が優れず、看病と子供の面倒で大変だと話しました。A店長は知らなかったことを詫び、親身になって心配して残業の指示など見直し協力すると伝えました。
さらに、Cさんが意欲的な目標を避けたり、苦手なお客様への対応から逃げる姿勢の背景を知ろうと、Cさんの家族や育った環境を聴きました。すると、両親が長男ばかり評価し、次男の自分は叱られてばかりで褒められなかったことや、サッカーが下手で、仲間から指摘を受け部活も辞めてしまった経験から、自己肯定感が低く、周囲の評価を恐れていることが分かりました。
A店長は、Cさんを理解せず頭ごなしに叱ったことを反省し、Cさんが素晴らしい商品知識を持っていると褒め、その強みを生かして多くのお客様に喜ばれる仕事をしようと勇気づけました。
その後、Cさんが頑張ったことをその場で褒め、感謝の言葉をかけるたことで相互理解も進み、Cさんの表情も明るくなりました。さらに、Cさんが「分かりました」と返答するが、ミスを繰り返すので、どう分かったのか復唱させ理解度を確認、全て理解できるまで指導するなど。Cさんが自信を持てるよう、細かく具体的な指導を繰り返したのです。
Cさんも熱心な指導に感謝し、期待に応えようと頑張って課題を克服して、お客様からの評価も高まり、業績も向上しました。
ネガティブ発言をする部下との絆づくり
A店長は次に、組織への不満など否定的発言が多いベテランエンジニアのTさんと生き様インタビューを実施しました。「自分は勉強が苦手だったが、憧れの先輩に励まされ、必死で努力した結果、試験を一発合格し、成長できたことがすごく嬉しかった。先輩が常に叱咤激励してくれ感謝している」と話す一方で、「前の上司が理不尽な要求をして有無を言わせなかった。この会社では何を言っても無駄だと思った」と背景を聴けました。
A店長は自分にも同様の先輩がいて感謝していると共感し、Tさんが職場に期待することや今後の目標を確認するとリーダーを目指したいと話しました。それを目指すのであれば、前の上司の不満を引きずって否定的な発言をやめるよう諭し、自分も成長するから、あなたも成長して欲しい、共に成長しようと働きかけました。
そしてTさんと毎日ミーティングをし、店舗の目標像や人材の成長計画を話し合いました。また、Tさんが自信を持って後輩を指導できるよう、技術力を高める目標を設定しました。A店長との絆を深めたTさんは、憧れの先輩同様、後輩に思いやりと情熱を持って指導し感謝されることを目標に、後輩指導に熱心に取り組みました。
次第にTさんは、日々の目標達成に向けリーダーシップを発揮するようになり、S工場長と共に、技術力No.1の工場を目指して人材を育成するリーダーとして成長したのです。