経営コラムColumn

高圧的だった工場長が革新し、組織を活性化させたパート2

自己革新テーマと実践事項

前号でご紹介した、「自分勝手な振る舞いで部下からは全く信頼されていない」と指摘を受けたS工場長。素直に受け入れ、自己革新テーマを『周囲へ常に感謝し、部下を愛して、育てる』とし、3つの実践事項に取り組みました。

  1. 毎日全員に感謝の気持を伝える
  2. 現場に出て、「やらせる」ではなく「自分もやる」を実践する
  3. 点検入庫とメンテンスパックを増大する

研修直後から、部下の話しをまず聞くことを意識し、一人ひとりの頑張りに「ありがとう」と伝えるSさんの姿が頻繁に見られるようになりました。部下からも感謝の言葉や相談が増え、「職場の雰囲気が良くなり、働きやすくなりました」といった声が聞かれました。

積極的に現場に出るようになったSさんは、問題の多いフロントの改善に取り組みました。以前は問題が発生するたびに叱りつけ、改善するよう指示するだけだったのですが、「やらせる」ではなく「自分もやる」を実践し、自らフロントに入ることで様々な課題が見えてきたのです。
SさんはPITリーダーと連携をとり、業務がスムースに流れるようフロントマンをサポートしました。整備状況を写真付きで解説する表を作り、お客様とのコミュニケーションを取り易くするなど、仕事のし易い環境づくりを進めました。
すると、お客様との会話が苦手だったフロントマンも意識が変わり、積極的に提案をし出しました。アンケートもフロント対応を褒めるものが増えて、意欲がわいたフロントマンは、「今度、付帯商品の拡販策をPITリーダーと打合せしたいのですが、アドバイスをいただけますか?」と相談をしてきたのです。Sさんは部下の明るい表情や、主体的に動く姿勢を素直に嬉しいと感じました。このフロントマンは成長著しく、メンテナンスパックの継続受注キャンペーンでは1人で16件獲得し全社トップになったのです。

最重要課題への取り組み

サービス部門の最重要課題は、点検入庫とメンテナンスパックの増大でした。Sさんは、営業担当に対しノルマを告知し、必ず実行するよう言い放つだけの行動を反省し、自ら現状を分析し、的確な施策を打ち、進捗をきめ細かに管理するようになったのです。
Sさんが点検入庫活動を分析すると、特に若手営業スタッフ2人の入庫率が低いことがわかりました。さらに活動状況を確認すると、
・リストが整理されていない
・点検パック未加入のお客様への到達率が低い
・電話到達した時のトークが考えられておらず、断られる。
と3つの課題が見えました。そこで営業マネージャーと連携して呼び込みリストを整備し、到達率が低い課題に対しては、顧客情報を踏まえコール時間を変更するよう指導しました。
さらに、2人にはロープレを実施し、「点検なんかいらないよね」と言われたらどう応酬するのか、様々なお客様を想定して共に考えました。
「顧客情報を確認し、入庫歴や家族情報からカーライフを想像して、点検の重要性を訴求する方法を考えよう。例えば距離を乗らないお客様でも、オイル交換をしないと酸化してエンジントラブルにつながるという話をしてから、無料オイル交換の提案をしてみよう」と、具体的に指導したのです。
その結果、若手のスタッフも意欲的に入庫促進に取組みました。
こうして今まで何も考えず、挨拶とお願いだけで終始した案内電話も、顧客情報に基づいた会話をした上の提案で、入庫してもらえるお客様が増えたのです。

こうした活動の結果、Sさんは点検、車検ともに入庫台数計画を達成、コロナで自宅待機となるメンバーが続出するアクシデントも皆の協力で乗り越え、サービス粗利昨対120%を達成。メンテナンスパックの加入獲得も昨対で10-12月108%、1月132%、2月180%と大きな成果を創出しました。
研修では他の工場長から、「課題解決に向けて数多くの施策を打っており、スタッフが自分の役割を理解して動いているので成果が出ている」と評価を受け、Sさんは嬉しそうな笑顔で、「ありがとうございます、もっとスタッフに成長してもらえるよう頑張ります」と答えました。

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シニアコンサルタント 新谷 健夫 Takeo Shintani

1985年に大手経営コンサルタント会社入社後、2000年からグループ会社を立ち上げ、買取店や残価クレジットFC店の経営に携わる。2006年からはカーリンクチェーンの本部構築とともに、直営店舗を運営する。小集団活動など、現場に入り込んでの組織開発を中心に、豊富なコンサルティング経験を保有し、自動車販売店の店長や工場長の意識革新、マネジメント能力の向上、営業スタッフの商談力強化など、実務経験を活かした実践的な指導に定評がある。

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