経営コラムColumn

ブランド価値を高める共感力 ~競争力強化への第一歩~

「競争力強化」に向けたブランド作り

縮小市場を見据え、トヨタでも併売化が確定しました。どのディーラーでも「競争力強化」を優先課題とし、ブランド強化を志向する経営者が増えています。
コトラー教授は「ブランドとは、財やサービスを識別させ、競合する売り手の製品やサービスと区別する名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはこれらの組み合わせ」と定義しています。一般的には、CIや店舗など見えやすい改善を試みますが、教授は「ブランドを広告するのでなく、体現せよ」と提言します。魅力的な表現の広告と、スタッフが体現する行動にギャップがあるとブランド価値を毀損します。
また、1980年代に、スカンジナビア航空を再建したヤン・カールソンが唱えた「真実の瞬間」があります。乗客が汚れたトレイを発見した瞬間に、乗っている飛行機に対する従業員の気配りも同じレベルと感じ、満足度がすこぶる低下します。
ブランド価値を高めるためには、スタッフによる高い顧客満足の体現が必要です。その鍵となるのがお客様の真の要望を捉える「共感力」なのです。

お客様は、共感してもらい、魅力的な提案が欲しい

「お客様に最高の満足を提供しよう」と理念を掲げるディーラーで、スタッフの訓練に立ち会いました。スタッフの8割は共感力が弱く、ベテランスタッフでさえ、お客様の話を遮る様子が散見されました。特徴を整理すると、次の通りです。
① お客様が発した重要なキーワードがあっても聞き逃す、気づかない。
② 重要なキーワードに対し深掘りするが、中途半端な状態で、次の話題に移る。
③ 深堀して要望やニーズを捉えても、途中で忘れてしまい提案に活用しない。
④ キャンプなどの用途を聞くと、車の活用の仕方は、みな一緒だと決め付けている。
⑤ 用途とニーズ(車や購入に期待すること)が、同じだと勘違いしている。
この結果、早合点して間違った提案が多く、お客様が困惑します。これでは、お客様に最高の満足を提供できず、ブランド価値を体現できていません。

お客様のニーズは百人百様

原因は何でしょうか。あるスタッフは「ニーズを決め付けてはいけない」と、ある体験を語りました。お子様のいないご夫婦が、キャンプのために、ミニバンを中型から大型に変えたいと来店されました。普段は、道具を貸し出すキャンプ場に、普通サイズのバッグ2つで軽装のまま出かけるようです。なぜ大型ミニバンが必要なのか不思議に感じ、見積り作成の際、「他に小型、中型のミニバンがございます。試乗してみませんか?」と確認すると、お客様は「大型が希望です。後方の視界が狭まると運転しにくいんです。友人の大型車を運転したら、最近の車は、後方の窓が広くて見やすく、運転しやすかったんです。」
スタッフは、お客様の真のニーズが理解でき、来店された所有車にあった荷物を全て検討のミニバンに載せ、後方視認性を確認いただきました。お客様から「他3店で検討したが、ここまで親身になって提案してくれたのは初めてです。ここで購入します。」と即決いただきました。
そのスタッフは、この体験談を交え「お客様のニーズは、百人百様です。絶対に決め付けてはいけません。疑問に思ったら直接お客様に確認することが重要です。このお客様のおかげで改めて共感力の重要性を実感しました。」と話しました。

いかがでしょうか。スタッフの体現する行動でブランド価値が決する良いエピソードです。顧客満足を高めるブランドには、共感力強化がとても重要です。

レッツチャレンジ

① 営業スタッフに対し、実際の商談を取り上げ、お客様の真の要望・ニーズについて確認してみましょう。
② 真の要望・ニーズが不鮮明な場合、お客様に対して「なぜか?」と関心を持って、「背景」を掘り下げてみましょう。
③ 懇意なお客様と「用途」などの情報から、「情報を掘り下げる」訓練をしてみましょう。
④ 普段の上司・同僚とのコミュニケーションでも「なぜか?」と関心を持って、「情報を掘り下げる」訓練をしてみましょう。

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導入企業の声

・ショールームで、お客様と笑顔で談笑しながら、スタッフがどんどん質問している声が聞こえます。お客様のことを理解しようとする姿勢が高まり、非常に明るい商談が増えたと感じます。また、店長からは、職場内の上司や同僚との会話でも、深く感情移入できるようになり、仕事が前に進むようになったと嬉しそうに報告してくれました。
                                                      A社長

・共感力強化後に、私がお客様役を担いロープレ訓練すると、ニーズを把握する力が相当高まったと感じます。嬉しい悲鳴ですが、中途半端なお客様設定では、深掘りされて丸裸にされてしまいます。こちらとしても真剣に準備しなくては、と危機感が芽生えました。
                                                      B店長

・商談案件確認すると、重要な情報やポイントを確実に収集できているので、助言も簡潔に済み、成約率も非常に高まりました。一方、低迷スタッフは、大事な情報を押さえていませんので、助言をしても後手に回り、失注してしまいます。次の育成課題が見つかりました。
                                                      C店長

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代表取締役社長 寒川 誉浩 Takahiro Samukawa

1992年に大手経営コンサルタント会社入社後、95年から新車ディーラー(カーディーラー)100拠点を支援。2002年に残価クレジットFC本部支援、2006年には、委託販売のカーリンクチェーンの本部構築、数多くの研修やノウハウ開発、理念経営、CS向上支援を実践。

営業スタッフの商談力強化、店長のマネジメント力強化から、経営理念の浸透支援、経営戦略策定支援まで自動車販売業に対して幅広い支援実績を持っている。

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