経営コラムColumn

お客様を「深く知る」共感力

受注率向上の鍵は「共感力」

新車の受注効率を上げるには、お客様の真のニーズを捉え、最高の提案を行うことが重要です。当社の支援先では、新車販売が平均で前年比130%増大しています。低迷しているスタッフの台数が1.5倍から2倍となる事例も多くあります。

受講生からは、「これまでは、お客様の話を聴かずに一方的に話していましたが、お客様を理解しようと聴くようになってからは、時間はかかるものの、逆に受注効率は上がった」との声を頂戴します。

お客様を深く知る鍵となるのが、「共感力」です。初めてお会いしたお客様とでも、世間話で心を和ませながら距離を縮め、カーライフで最も重視すること、なぜ今回このお車を検討するのか、将来はどのようなカーライフを実現したいのか、その理由や背景を深く理解し、提案に生かす能力です。

そのためには、お客様に最高の提案をしようと思う「顧客志向の情熱」が重要です。この情熱を持ちながらお客様に最大の関心を持って情報収集することで、お客様を深く理解できるのです。

しかし、こうした「聴く訓練」が不足しており、お客様の心を和ませるどころか、お客様は関心がないのに、スタッフが「売るための話」を一方的に続けることで、お客様が心を閉ざす場面を多く見かけます。これでは、顧客離脱につながります。

お客様に関心がない営業スタッフBさん

教育熱心なベテランAさんは、ある日、若手スタッフBさんの店頭接客を見ていました。

Bさんは、お客様に展示車の中型ミニバンを見せながら、現有車、乗り替えのきっかけ(家族4人でキャンプに行きたい)、用途(通勤、趣味のゴルフ、遠方の帰省)を聞いています。共通の話題で盛り上がり、楽しい商談になっていましたが、途中から「最新の安全装備が付いていまして」と一方的に衝突被害軽減ブレーキの話しを始めました。

そして、「お見積もりさせてください」とお願いし、グレードや色、オプションなどを確認して、「よろしくご検討ください」と言って、カタログと見積書を渡し、来週、再度面談する約束を交わし、お客様は帰られました。

Aさんは、Bさんを呼びました。「Bさん、さっきのお客様は、安全装備に関心を持っていたの?」Bさんは、「さぁ、どうでしょうか?」と首をひねります。「でも、『凄いね』と言ってくれたので関心はあったと思います」と答えました。Aさんは、「お客様はお車に何を求めていたの?」と質問しました。Bさんは、「ご主人は荷室の広さを気にされていましたし、奥様からは燃費を聴かれました」と答えました。
Aさんは、「ところで、乗り替えのきっかけはキャンプだったよね。いつ、誰とどこに行くの?どんなキャンプがしたいの?なぜこの車種なの?これよりも大きいタイプや小さいタイプもあるよね?」と聴きました。Bさんは答えられませんでした。

Aさんは、「Bさんは、お客様に関心がないようだね。それでは、営業のプロとして失格だよ」と諭しました。

お客様を深く知る「なぜ」の重要性

Aさんは、「Bさん、お客様に喜ばれたら嬉しいよね」と聴き、「それは嬉しいです」とうなずくBさんに、「お客様に喜ばれるには、深く知る必要があるんだ。そのためには、5W1Hで質問することだよ」と話し、さらに「特に、『なぜ』が重要なんだ。なぜキャンプに行きたいのか?なぜ、数ある車の中でこの車種を選んだのか?なぜその車種と違うサイズではダメなのか?を聴くんだ」、そして、「来週の商談は私が同席するから参考にして」と提案しました。

後日、Aさん同席の面談が始まりました。自己紹介と雑談で和やかな雰囲気となった後、Aさんは、「なぜ」の質問を切り出しました。
すると、「子供のころ、父親がデパート勤めで土日に遊んでもらえなかったので、子供とキャンプに行くことをとても楽しみにしていること。一方で、高速道路ではアクセルとブレーキの操作で足が疲れること。コンパクトカーからの乗り替えで、大きいクラスの車では高速道路の運転に不安があること。小さいクラスは荷室が狭いと思っていること」が聴けました。

さらに、話が進むと、「もっと孫の顔を見せに実家に帰りたい」との本音も聴けました。Aさんは、「○○様、ありがとうございました。展示車で揃えたいキャンプ用品をどう積むかをご一緒に検討しましょう」と提案しました。その後、「高速道路の追従ドライブ支援機能でアクセルとブレーキ操作が不要になり、さらに、ハンドル操作サポートがあるので疲れが軽減され、キャンプにも頻繁に行けて子供ともたくさん遊べるし、実家にも多く帰ることができるので、ご両親も喜ばれますよ」と提案しました。

お客様も嬉しそうに、「親身に相談に乗ってくれてありがとう。実は、他社の見積りが安かったけど、Aさんから買うことにします。これからも長くお付き合いしたいのでよろしくお願いします」とおっしゃいました。

同席したBさんは、「Aさんの商談を見て、お客様を深く知るとはどういうことかが良く分かりました。お客様のカーライフがどう変わるかの提案も参考になりました。ありがとうございました。ぜひ、参考にして、お客様に喜ばれる商談力を磨いていきます」と感謝しました。

お客様に関心を持って、深く理解すると強い信頼関係が生まれます。それが、受注率向上の鍵となりますし、生涯客獲得の第一歩となるのです。お客様に関心を持つ「顧客志向」を高め、お客様を深く理解する質問話法を磨く訓練をお薦めします。

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