中小法人開拓のすすめ③職域開拓で紹介受注を増大する。
前回は、中小法人開拓の一助として、「①法人営業に対する苦手意識を克服する。②社長の懐に入り、人間関係を強化する。」の要点をご紹介しました。今回は、「③職域開拓で紹介受注を増大する。④お役立ち情報提供で価格競争から脱却する。」についてご紹介します。
職域開拓で車販を3年で1.9倍にした店舗
職域開拓で紹介受注を増大した店舗の事例をご紹介します。そのポイントは、次の3点です。
1.知人に紹介したくなる営業スタッフの育成
3ヵ月に1度の顧客接点でお客様が気軽に要望を言っていただける関係を作りました。ご要望は、車のことに留まりません。
新規開店したラーメン屋に食べに行き、「ラーメン好きのお客様に配りたいので割引券もらえますか」とお願いし、お客様に配れば、お客様にもラーメン屋さんにも喜ばれます。
また、腰痛、育児などの様々なお悩みや関心があるお客様には、専門家など詳しいお客様から学んだことを自ら実践し、ご紹介するのも喜ばれます。
さらに、お客様からの依頼や困っている時には、スピード対応を心掛けました。お客様から感謝される絶好の機会です。例えば、お客様から事故の連絡が入れば、商談中でも「他のお客様が事故でお困りの様子なので、しばらくお待ちくださいますか。」とお断りし、手の空いている同僚にお願いします。もし、誰も対応できなければ、「今夜ご自宅で商談の続きをお願いします」とお断りし、すぐに駆け付けます。慣れない事故対応で不安なお客様は間違いなく喜んでもらえます。また、商談を中断したお客様にも「彼から車を買えば、事故対応の時も安心」との印象をあたえることもできます。
このように話題や活動の幅を広げていけば、「〇〇さんは、良くしてくれる。気が利く。何でも対応してくれる。任せておけば大丈夫。」などの声をお客様から頂け、紹介をもらえるようになりました。
2.想像を超える職域開拓
訪問は、自宅ではなく、職場に集中しました。
新車や中古車の納車式も職場で同僚の皆様にも立会いただき実施する。点車検も来店ではなく、職場で引取納車する。書類回収やアフターフォローも職場にお伺いする。用事が無くても、気軽に調子伺いに訪問する。依頼、トラブル、クレームがあれば、スピーディーに対応する。
お客様が不在でも、同僚の方に鍵を預けてもらえば名刺交換もできる。さらに、同僚の車の調子が悪いと伺えば、車を半日お預かりし、点検修理すると、すごく喜んでもらえます。それが職場でも評判になると紹介が一気に増えます。
お客様の職場の上司・同僚・部下に「良く世話をしてくれる車屋さん」との印象を持ってもらい、紹介を増やしました。自宅訪問や来店では、依頼してもすぐに紹介してもらえないが、職場だとすぐに紹介してもらいやすくなりました。
3.顧客満足と業績を両立し、追求する理念経営
「お客様の喜ぶことは何をしても良いが、業績は必ず達成する」という規律を磨きました。この規律は、幹部が事あるごとに何度も議論を重ね、磨いてきたからこそ、組織に浸透してきました。
具体的なエピソードをご紹介しましょう。スポーツ施設長をしているお客様から「グランド整備に使うので、壊れてもいいような車が欲しい」との要望を頂戴しました。そこで、社長とも相談し、廃車すれば2~3万円の利益になる極低年式車を贈呈しました。お客様から大変感謝されたので、「喜んでもらえて良かったです。私にもぜひご紹介をお願いしますね。」と依頼すると、社員5名の紹介をもらえました。
職域開拓のあるべき姿を研ぎ澄ます
新車ディーラー(カーディーラー)業界の歴史を見ると、自宅訪問から来店誘致に営業スタイルを変えてきました。しかし、職域開拓で成果をあげるならば、来店誘致ではなく、職場訪問や引取納車を増やすパラダイム転換も必要です。
そもそも、「顧客満足は業績につながらない」との考えが、経営者やスタッフにも幅広くあるように思います。本稿でご紹介した取組は、手間がかかり効率が悪いとお考えの方も多いと思います。しかし、腰が引けた中途半端な顧客満足だから業績につながらないのです。期待を超える顧客満足は、感動を与え、リピート紹介の増大に結びつくのです。その意味では、顧客満足活動の目的を「クレームトラブルを減らす」から「期待を超える」に転換することも必要です。
上場企業や大手企業は、セキュリティが厳しいので、そこに勤務しているお客様への対応は、来店誘致型が良いと思います。しかし、中小企業に勤務しているお客様には、職場での引取納車や書類回収は喜ばれるし、紹介をもらえるチャンスが増えるので、店舗から近い職場に限定してでもチャレンジしてみてはいかがでしょうか?