経営コラムColumn

談笑客増大ビジョン・リーダーシップのすすめ本号は、2020年2月4日に開催した「新春経営シンポジウム」の講演内容の抜粋です。

前号では、顧客関係性(下表)を1から2にレベルアップし、NPS(顧客推奨度)を劇的に改善した事例をご紹介しました。今回は、2から3にレベルアップし、談笑できるお客様を増やし、バリュー商品受注や疎遠客入庫代替を増やした事例をご紹介します。

顧客関係レベル 特徴
1.顧客対応力不足で顧客関係が希薄 5Sが不徹底。職場の環境の雰囲気が悪い。
クレーム・トラブルは少ない。
2.顧客対応力はあるが親密客が少ない クレーム・トラブルは少ない。
親密客、リピーターが少なく、疎遠客が多い。
3.親密客は多いが、そのご家族との関係が希薄 親密客、リピーターが多く、疎遠客が少ない。
併有車の入庫や代替が少ない。
4.お客様のご家族ともに親しい顧客が多い 併有車の入庫や代替が多い。
友人知人の紹介は少ない。
5.お客様や人脈からの紹介が多い お客様の生き様(仕事、人生、夢など)を理解している。
話題や人脈が豊富で車に限らず頼られる関係。

談笑できるお客様を増やすことで成功体験を積む

この店舗(店員26名)は、引継ぎユーザーが多く、お客様との関係が希薄でした。しかし、2019年秋にビジョン・リーダーシップ訓練を導入し、わずか3ヵ月で談笑できるお客様を増やし、バリュー商品の受注増大、疎遠客との関係強化でも成功体験を積むことができました。

導入前の状況

3~4年前、スタッフリーダー2名が相次いで他店舗のマネージャーに昇進したこともあり、お客様との関係も希薄になっていました。2018年7月にK店長(57才)が、2019年7月にサービスマネージャーがそれぞれ他店舗から着任しましたが、2019年9月時点では、下記のような状態にありました。
①マネージャー3名は、店員との関係が希薄で拘りも弱く、十分な成果をあげさせられていない。
②チーム力が弱く、連携不足から顧客満足や成果を逃している。
③スタッフとお客様の関係が希薄で提案の量・質ともに低く、車販や割賦が未達している。
④エンジニアは入庫満足度を上げるためのツール活用や絆提案(サービスや代替など)ができていない。

店舗ビジョンと課題

マネージャー3名で討議を重ね、問題意識を共有し、ビジョンを掲げました。
「お客様と店員が親しくなり、来店して良かったと感じてもらえる店舗づくりをめざす。また、全員が成長するために、互いに遠慮せず、指摘し合い、気遣い、感謝を伝える。」
また、下記課題に取り組むことを決めました。
①スタッフは談笑できるお客様を増やす(顧客関係強化)
②スタッフの提案マインド向上
③TECSET(タブレット端末を用いたサービスツール)活用による顧客満足度向上
④互いに気遣い、感謝の言葉を伝えるチーム作り

マネージャーの認識と行動が変わる

サービス部門は、新任マネージャー着任以来、個別面談で伝えてきた方向性と相違なかったので早々に合意できた。
販売部門は、反応が薄かったので、再度、個別面談を実施しました。「談笑が成果につながる」のは頭では分かっても行動が伴っていなかった。マネージャーの日々のスタッフ打合せも談笑数ではなく、提案数に走っていた。目的と手段の履き違えに気づき、修正した。
マネージャー3名が本気で店員と向き合い、月1回1時間の個別面談を繰り返すことで、店員同士のコミュニケーションも増え、お互いの称賛や指摘も盛んになり、雰囲気ががらりと変わった。

人材育成と組織風土改革

店員の自覚が高まり、リーダーやベテランのネガティブで一方的な言動が減り、互いに感謝し、気遣うようになった。店員同士の毎日1回の会話も、60代のベテランスタッフが率先垂範してくれた。低迷していたスタッフもサービス呼込みや高年式車の査定による商談発掘が増えてきた。その結果、同僚にも好ましい影響を与え、成長意欲が高まった。

談笑できるお客様が増えた

引継ぎユーザーは、今も継続取引を頂戴しているが、現任スタッフとの関係が希薄なため、危機感がありました。継続取引頻度による顧客区分では、この問題が浮き彫りにならないので、店舗独自の顧客区分(談笑できるお客様か否か)で見える化し、改善に取り組みました。その結果、談笑できるお客様の構成比が、3ヵ月で41%から46%に増えました。
「前は、商品や買い方の話から入っていたが、今は、まずは車の話題ではなく、お客様と談笑するために何を話そうかと考えるようになり気持ちの準備が変化した」と言うスタッフが増えた。マネージャーは、スタッフも当然考えていると思っていたが、実は真意が伝わっていないことに気づくことも多々あった。
高齢者とは、お子様が近くに住んでいるか等の家族情報の話題が増えた。また、お客様と仲良くなるために、進んで自己開示するようになった。皆、意識が大きく変化した。

提案マインド向上によるバリュー商品受注や疎遠客入庫が増えた

スタッフの提案マインドを高めるために、朝礼後、好事例の共有を始めた。嬉しいことに、皆、主体的に発信し、互いに好ましい影響を与えている。その結果、割賦をはじめバリュー商品の受注も増えた。また、カレンダー配布からの代替、疎遠客からの入庫・代替なども増えてきた。

サービス提案商品 12月
2018年 2019年 前年比
バッテリー 17個 35個 206%
クリーンエアフィルター 17個 50個 294%
クレベリン 3件 39件 1300%
第3四半期業績(対前年比)
新車販売台数 114.0%
U-car販売台数 96.1%
割賦手数料 169.6%
新車売上 121.3%
新車売上利益 117.3%
U-car売上 118.6%
U-car売上利益 90.3%
サービス売上 106.0%
サービス売上利益 103.4%

TECSET活用による入庫客満足度向上

エンジニアは、お客様対応訓練を実施した。接客時余裕ができ始め笑顔が出るようになり、お客様からの感謝の言葉がモチベーションにつながるというエンジニアが増えてきた。また、口頭の説明だけでは理解できなかった整備内容がイメージ画像で分かり易くなり、女性客からは、ありがとうと良く言っていただけるようになった。

K店長の所感

従来は、タスクとスキルを重視していたが、最近は、店員のモチベーションが先だと考えるようになった。ビジョン・リーダーシップ訓練で、ビジョン共有のコミュニケーションが相互理解と信頼感を高めると実感した。仕事が楽しいと感じる店員も、3割から7割に増えたと思う。

最後に

顧客関係をより良くするビジョン・リーダーシップは、利害対立を乗り越えて、組織一丸となるために極めて効果的な手法です。皆様もビジョン・リーダーシップに取組んでみませんか?

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