経営コラムColumn

メカニックの育成と定着を実現する人事評価制度

メカニックの評価と待遇の実態

カーディーラーではサービス部門の生産性向上が大きな経営課題です。サービスカバー率が重視され、市場が成熟する中で、既存客から収益を確保するライフタイムバリューの考え方が常識になり、そのための戦略を競っています。
しかし、生産性に影響を及ぼすメカニックのモチベーションを左右する人事評価に問題を感じながら、改善に着手できていないカーディーラーが多くあります。
メカニックの給与体系は、多くの場合「年齢・勤続年数」「資格の有無」等が基準になっており、典型的な年功序列型賃金です。営業スタッフの場合、販売台数やその他の営業種目に応じた報奨金制度を柔軟に活用することでモチベーションを向上できます。しかし、メカニックの場合、頑張っても頑張らなくてもあまり変わらない給与体系になっているため、モチベーションが悪化し、人材の流出に繋がることが多くなっています。

メカニックの人事評価の方向性

メカニックの仕事は多岐にわたります。売上的には車検が大きな柱ですが、メンテナンスパックが増えれば簡易点検やオイル交換の作業も増え疎かにできません。一方で、粗利アップを図るための追加整備や部品交換の提案もメカニックの仕事になってきています。又、お客様が車に不具合を感じた時の一般整備、故障診断や重整備などの業務も重要です。
メカニックの生産性を図る指標として工賃売上があります。工賃売上の高いメカニックほど仕事をしていると判断し、評価指標にして給与に反映させている会社もありますが、これも問題があります。例えば、先輩が後輩に指導して作業させた場合、指導した先輩には工賃売上が上がらず、教えてもらって作業した後輩だけが評価されるということになってしまうわけです。
ある会社で、手の空いているメカニックが他の人の作業を手伝おうとしないのが問題だとお聞きしたことがあります。しかし、よく聞いてみると、個人の工賃売上を評価指標にしていることが判りました。それでは、チームとして助け合い、先輩が後輩を育てるというような組織風土にはなりません。
車検の生産性を上げたいのであれば、それに貢献するスキルを明確化して評価しなければなりません。台粗利を改善したいのであれば、メカニックのコミュニケーション力や提案力を評価する必要があります。そうすれば、自然と人材育成に繋がるのです。

自社におけるメカニックの役割を徹底的に考えることがスタート

予防整備やお客様のカーライフの充実を提唱し、台粗利拡大に向けた戦略を取るのかによっても変わってきます。
従って、メカニックの人事評価制度を作るためには、自社の経営戦略や経営方針に基づき、彼らにどんな役割を果たして欲しいのかを徹底的に考えることが重要です。その上で、必要なスキルや能力を明確にし、評価基準を作り込むのです。
自社に適した人事評価制度を作るには、手間暇がかかります。適正な人事評価制度が無いからと言って、すぐには困りません。しかし、これを放置しておくと、優秀な人材ほど不満を持ちやすく、人材が流出し大きな損失に繋がります。
自社の人事評価制度に問題があるとお感じであれば、是非、この機会に見直しを検討してみてはいかがでしょうか。

レッツチャレンジ

        

  1. 自社の人事評価制度について「人事評価制度診断チェックリスト」に基づき、チェックしてみましょう。
  2. 問題点が多ければ、会社の主要メンバーを集め、チェックリストに基づき、問題を共有しましょう。
  3. 改善項目について優先順位を設定し、役割分担をして改善を進めましょう。
  4. 一定期間、経過した時点で改めて、チェックリストに基づき、改善できた点、改善しなければならない点を整理しましょう。
  5. 自社の人事評価制度が魅力的になるよう継続的に改善を進めましょう。

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「人事評価制度診断チェックリスト」

実際に人事評価制度と給与体系の改善に着手した経営者の声

当社の人事評価制度と給与体系は30年前に前社長が作りました。年齢給と職能給を中心にした当時主流だった給与体系ですが、分析してみると硬直化した年功序列型賃金になっていました。社員、特にメカニックからの不満が多く、中堅社員の退職が続きました。2年前からメカニックの評価を中心に制度改定と給与体系の改善を進めました。試験運用をした結果、メカニックからの評判も良くモチベーションも向上しました。是非、これを完成させ、社員の定着と育成に繋げたいと考えています。  S社 社長

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    月刊Car Business
    2020年第3号
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シニアコンサルタント 瀬野 幸洋 Yukihiro Seno

1986年に大手経営コンサルタント会社入社後、95年から新車ディーラー(カーディーラー)1180拠点以上を支援。営業スタッフの商談力強化、店長のマネジメント力強化等のテーマに取り組む。

管理者を対象にした内観研修(M-SIP)を長年に亘って担当し、自動車販売店の店長や工場長の自己革新事例には事欠かない。

管理者やリーダー社員の仕事に取り組む姿勢を変革し、その成長に寄与することをライフワークとしている。

自動車業界の後継者育成にも数多く関与し、日刊自動車新聞社発行の「クルマ屋を継いで良かった!」の著者でもある。

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