経営コラムColumn

生産性を向上させる車検3ヶ月前予約~衆知を集め、創意工夫する改善活動で高効率なチームを創る~

働き方改革は生産性向上が前提

昨今多くの企業で「働き方改革」を推進しています。中でも、新車ディーラー(カーディーラー)業界は、その取り組みが加速度的に高まり、閉店時間の前倒し、年間休日の増加、労働時間の短縮などを取り組んでいます。あるディーラーは、完全週休2日を導入しました。週6日勤務を5日に短縮するので業績を維持しようと思えば、1.2倍の生産性向上が必要です。
このような生産性向上の条件は、業務効率と業績拡大を同時に推進することです。弊社では、店長やリーダーの革新とともに、店舗全体で「生産性向上の改善活動」を支援しています。今回は改善活動の中で取り上げた「車検3ヶ月前予約」についてご紹介します。

車検獲得の優劣で生産性は劇的に変わる

この店舗は、繁忙期に1人10台の受注を計画しています。しかし、休日が増え、労働時間が短縮する中、受注への活動時間を捻出できませんでした。その要因を店舗全員で列挙した中に「車検予約が進まず、コール回数が増え、本来の受注活動の時間が取れない」とありました。このディーラーでは、営業スタッフが車検コールを行い、スタッフ別に当月、翌月の車検目標を設定しています。特に、予約獲得しにくいのは「シフト制勤務で車通勤するお客様で、先の予定が分からないと言われることが原因」とありました。
一方、車検獲得率が高く、予約件数も多い優秀スタッフがいて、しかも継続的に月10台以上の新車受注を獲得していました。彼は「そのようなお客様でも車検予約を獲得できますよ」と全員に具体的な方法を共有してくれました。

お客様への価値、メリット・デメリットを伝える

お客様の設定条件は「17年12月に車検予約コールを行う。18年3月10日車検満了、シフト勤務で車通勤のお客様」です。優秀スタッフのポイントは以下の通りでした。

  1. 本日は3月の車検予約のご案内のため電話している、と明確に伝えること
  2. 車検日3月10日を確認し、2月10日から車検を通すことが可能であること
  3. 2月10日は土曜日で人気があり、予約可能な台数も限られること
  4. ぎりぎりで3月初旬に車検予約し、都合が悪くなった場合車検が切れてしまう
  5. 車検が切れると車に乗れなくなるので、私はそうなって欲しくないと訴える
  6. 例えば、2月10日で予約すれば、都合が悪くても変更可能で、1か月余裕がある
  7. 仮に2月10日で予約入れ、私から1月中旬に確認の連絡をするので安心
  8. ○○様、いかがでしょうか?

すると、他のスタッフは「この内容でご案内すれば予約を獲得できますね。」、「何度も連絡しなくて済む、明日から早速実施します。」と好反応でした。この活動の推進責任者の店長からも「これはすごい。効率も改善しながら予約獲得できる。一気に生産性が向上します。」とありました。

衆知を集め、創意工夫する改善活動で高効率なチームを創る

いかがでしょうか。働き方改革は、業務効率と業績拡大の同時推進が求められます。そのためには、チーム全員が「生産性向上を阻む真の原因」と「その解決策を導き出す」、衆知を集め、創意工夫する改善活動が必要です。この活動の結果、チーム全員が成功体験を積み、価値を認めるので、更にこの活動が加速します。
トップの皆様は、衆知を集める改善活動を推進され、働き方改革の成功に向けた生産性向上を展開いただきたいと思います。

レッツチャレンジ

  1. 店舗の戦略・改善テーマを設定する
  2. そのあるべき姿と現状を比較しギャップを出す
  3. そのギャップの発生要因を全員で列挙する
  4. 発生要因を一つずつ掘り下げ、真の原因を探索する
  5. その真の原因を解決する施策を全員で出し合う
  6. 既に解決しているスタッフから具体的内容を共有してもらう
  7. その成功要因を整理し、全員が実現できる方法に落とし込む

導入企業の声

改善活動が活性化してきました。6か月間継続していますが、最初はスタッフが遠慮がちで本音で語ってくれませんでした。出来ない理由を列挙するときは言い訳に近い内容もありましたが、真の原因にたどり着かなければ解決できないと考え、じっくり聴きました。先日も、入庫客への代替提案方法を共有しましたが、段々見込みが出てくるようになりました。知恵を絞って実践し、成功体験が増えると確実に活性化していきますね。
(トヨタ A店長)

現在、月2回の改善活動で、様々なテーマで討議していますが、先日は平日納車を増やす方法を検討しました。どうしても土日の商談と納車が重なってしまうので生産性が上がりませんでした。先月は約70%の納車を平日に実施できました。更に現在は、お客様満足度を高めながら、納車1台当たりの効率改善を検討している最中です。アイデアがまとまりそうなので非常に楽しみです。
(ホンダ B店長)

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代表取締役社長 寒川 誉浩 Takahiro Samukawa

1992年に大手経営コンサルタント会社入社後、95年から新車ディーラー(カーディーラー)100拠点を支援。2002年に残価クレジットFC本部支援、2006年には、委託販売のカーリンクチェーンの本部構築、数多くの研修やノウハウ開発、理念経営、CS向上支援を実践。

営業スタッフの商談力強化、店長のマネジメント力強化から、経営理念の浸透支援、経営戦略策定支援まで自動車販売業に対して幅広い支援実績を持っている。

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