経営コラムColumn

新車ディーラー(カーディーラー)の組織風土改善の必要性

新車ディーラー(カーディーラー)特有の組織風土

企業には特有の組織風土が存在し、その良し悪しが、企業の成長を左右すると言われています。この組織風土は、その企業の事業構造、歴史、構成要員等によって異なることが一般的ですが、新車ディーラー(カーディーラー)という事業においても、独特の組織風土が形成されているように思います。もちろん、新車ディーラー(カーディーラー)といっても、個々の企業によって異なる点も多いわけですが、組織風土に関しては共通の課題が多いのではないかと考えています。
以下にその共通の課題について、列挙してみましょう。

組織全体をまとめていくための「共通の価値観」が浸透していない

「共通の価値観」とは「同じ会社で働く人たちの物事の捉え方、考え方が共通であるかどうか」ということです。「わが社はお客様にどのように接していくのか?」というような命題に対して、社員がバラバラな考え方をしていては、事業は成り立ちません。そのためには、価値観のバックボーンとなる理念やビジョンといった「共通の価値観」が必要になってきます。ところが、多くの新車ディーラー(カーディーラー)でお話しを聞いていると、この「共通の価値観」がないか、あっても浸透していないケースが多いように感じます。
新車ディーラー(カーディーラー)の経営は、自動車メーカーの戦略や方針に強く影響を受けます。このことが、個々の新車ディーラー(カーディーラー)独自の理念やビジョンの形成を阻害してきたことがその要因でしょう。しかし、トヨタが全車種併売で、実質的に系列を統合する動きが加速する今の時代においては、新車ディーラー(カーディーラー)各社が固有の理念やビジョンを持っていなければ、組織を同じ方向にまとめていくことはできないのではないでしょうか。
また、「顧客満足を追求しよう」、「顧客様の真のニーズにお応えしよう」といった理念があり、毎朝唱和しているものの、実際の現場では、お客様のカーライフやニーズを深掘りすることなく、見積りを作成して値引きで勝負する営業スタッフやお客様に共感することなく事務的に対応してしまうフロント・サービススタッフなど理念が浸透しているとは思えない実態も散見されます。「共通の価値観」が本当に現場で実現できているかを今一度振り返る必要があると思います。

「自分に自信が持てない」営業スタッフが多い

実際に組織風土に関するアンケート調査をしてみると、意外にも「自分の仕事(能力)に自信が持てない」営業スタッフが多いことに驚きました。営業スタッフが自分の仕事について自信が持てないようでは、個々人の販売実績が伸びないばかりか、組織全体のモチベーションにも悪い影響を及ぼします。
営業スタッフの仕事は「販売台数」という結果数値で評価されることが多いため、結果を出すためには当然、プロセスである営業活動手法や営業技術(スキル)についてきちんと教育する必要があります。それが結果につながれば、成功体験となり、営業スタッフが自分の仕事に自信を持つことができるのですが、多くの新車ディーラー(カーディーラー)では、ノルマを与えて報奨金を設定してモチベーションを喚起する手法に終始し、肝心の営業に関する教育が疎かになっているようです。これでは、自分の仕事に自信を持った営業スタッフを増やすことはできないと思います。
営業スタッフのスキルが年々高まり、自信を持ってお客様のカーライフに合わせたお車や買い方の提案ができるような教育が重要です。

店長やマネージャーの欲求水準が低い

階層別で気になるのは、中堅幹部やマネージャークラスの人材の欲求水準が低いという点です。そのクラスであれば、当然、今の状態に安住せず、更に高い状態を目指す必要があります。しかし、実際に組織風土の調査をしたり、経営者の方からお話しを伺うと、「店長やマネージャーになると、守りに入って意欲的でなくなる」という実態が見え隠れします。ある程度の地位と収入を得ることができれば、誰しも守りに入ることは推測できます。そうならないためには、店長やマネージャーのあるべき姿を明示し、欲求水準を高めるための教育を継続的に行う必要があるのではないでしょうか。
自社にも同じようが現象があると感じる経営者の皆様には、是非、組織風土の調査を実施してみることをお奨めします。

レッツチャレンジ

  1. 自社の組織風土についてアンケート調査を行いましょう。
    ※質問項目を準備する方法とフリーで書かせる方法があります。
  2. アンケート内容を基に自社の組織風土について分析考察しレポートを作成しましょう。
  3. レポートを基に経営幹部で話し合い課題を整理しましょう。
  4. 組織風土改善に向けた課題解決策についての活動を計画化しましょう。
  5. 組織風土改善活動計画を社員に公開し協力を求め、改善活動を進めましょう。

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実際に組織風土調査を実施した経営者の声

・自社の実態がアンケートに如実に反映されており、驚きました。理念やビジョンはあるものの不鮮明な点もあり、社員に十分に理解させることができていないと思っていましたが、ここまで「共通の価値観」が低いのには大きなショックを受けました。営業スタッフが自分の仕事に自信を持てていないというのも大きな問題です。課題は明らかになったので、優先順位をつけてスピーディーに改善を進めようと思います。(H社 社長)

・「同一の危機感」や「感謝の気持ち」については、経営陣から一般社員にかけて持っているのですが、方向性がバラバラで社員間の信頼関係が悪く、それが原因で効果的な経営ができていないことが良くわかりました。人事制度に対する不信感が社員のモチベーションに強く影響していることも大きな問題です。課題を経営幹部で確りと共有して対策を検討したいと思います。(G社 常務)

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    本コラムが掲載されている
    月刊Car Business 2019年第1号
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シニアコンサルタント 瀬野 幸洋 Yukihiro Seno

1986年に大手経営コンサルタント会社入社後、95年から新車ディーラー(カーディーラー)1180拠点以上を支援。営業スタッフの商談力強化、店長のマネジメント力強化等のテーマに取り組む。

管理者を対象にした内観研修(M-SIP)を長年に亘って担当し、自動車販売店の店長や工場長の自己革新事例には事欠かない。

管理者やリーダー社員の仕事に取り組む姿勢を変革し、その成長に寄与することをライフワークとしている。

自動車業界の後継者育成にも数多く関与し、日刊自動車新聞社発行の「クルマ屋を継いで良かった!」の著者でもある。

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