経営コラムColumn

組織を活性化させる人事評価制度

新車ディーラー(カーディーラー)における人事評価制度の問題点

社員にアンケート調査を実施すると、必ずといって良いほど「人事評価に不満がある」という声が強く挙がってきます。特に新車ディーラー(カーディーラー)では、店舗や営業スタッフの販売台数の評価が重要視され、その他のことが十分に考慮されていないケースが多いように感じます。
新車ディーラー(カーディーラー)における人事評価では、職種別に問題が異なります。
営業スタッフについては、業績給(報奨金等)のウェイトが高く、それ以外の賃金の変動要素があまりありません。そのため、自分の短期的な成績のみを重視する一匹狼型の人材が多くなる傾向があります。現代においては「将来のためのCS活動」や「組織的なお客様対応」が求められますが、それが評価される制度になっていないため、それらの取り組みや改善が進まないのが実態のようです。
営業スタッフ以外の職種(フロント、メカニック、本部事務職等)については、個人の業績数値による評価が難しいため、典型的な年功序列型賃金になりやすく、組織の硬直化に繋がっています。ベテラン社員はマンネリ化してレベルアップが進まず、若手社員はモチベーションが上がらず離職が増える傾向にあります。

評価すべきは何か?

上記の問題を解決するためには、結果数値や年功ではなく、社員の日頃の行動や仕事に取り組む姿勢をきちんと評価し、それを正すことのできる人事評価制度が必要になります。
例えば「CS活動を徹底して、お客様に喜びを提供する」という理念を掲げているとすれば、それを実現するために営業スタッフやメカニックは何をすれば良いのかを明確にしてあげる必要があります。そして、それを評価基準にすべきなのです。
「チームワーク重視」や「社員間の連携強化」ということを経営方針として打ち出すのであれば、社員がそれを行動に移した場合、きちんと評価して、昇給や昇格に連動させる必要があるわけです。

理想の人材像を明確にして評価基準にすることで組織は活性化する

経営者の皆様には、自分が大事にしたい経営理念や実現したい経営ビジョンがあるはずです。そして、社員がその理念を誠実に実践し、ビジョンの実現に向けて全力で努力してくれることが、最も重要なのではないかと思います。
ある企業では、5年前に経営理念を制定し、毎朝、朝礼で唱和をしていましたが、社員には十分に浸透しませんでした。しかし、2年前から、経営理念を実現するために必要な「理想の人材像」を鮮明に描き、社員に教育を行いました。そして、その「理想の人材像」を基にした評価基準を設計し、運用をスタートすると、社員の仕事に対する姿勢や行動に明らかな変化が見られ、組織が活性化してきました。
その企業の評価基準の一項目には「お客様へのおもてなしの意識」というものがあります。それが具体的にどのような行動を意味するのか、「理想の人材像」の中で、過去にあった事例を基に解説文を作成しました。そして、これを社員全員で読み合わせをし、意見交換を行いました。そうすると、今までお客様が来店してもあまり気にかけなかったベテランのメカニックが、率先してお客様に声がけし、時にはご要望を伺うようになったそうです。  
今までも、事あるごとに社長が会議や朝礼で、その重要性を話していましたが、ほとんど効果がなかったそうです。ところが今回は、すごく変化が見られたと驚いておられました。
自社の人事評価制度にお悩みであれば、理念を実現するための「理想の人材像」をベースにした、評価基準づくりを考えてみてはいかがでしょうか。

レッツチャレンジ

  1. 5年後、10年後を見すえ、自社が存続、発展するために必要な理念やビジョンを再考しましょう。
  2. その理念やビジョンを実現するために必要な「理想の人材像」を具体的に描きましょう。
  3. 「理想の人材像」から考えられる「人事評価要素」を抽出しましょう。
  4. 人事評価要素について5段階の評価基準を明確化しましょう。
  5. 作成した評価基準に基づき、自社の社員を評価してみましょう。

導入企業の声

社員をどのように評価すればよいのか長年悩んでいましたが、自分の掲げている理念や今後実現したいビジョンをベースにした評価制度をつくるという考え方には、強く共感しました。実際に作る過程では、いろいろと悩みましたが、自分の考え方も整理でき、又、社員にも明確に示せるので、とても良かったと思っています。    K社 代表取締役社長

今までは評価基準が曖昧で、社員が「何をどう頑張れば評価されるのか。給与があがるのか」が解らなったのだと思います。今回、理念やビジョンを具現化し、それに基づく「理想の人材像」を社員に示したことで、多くの社員の行動に変化が見られました。各店舗や事務所の中では、リーダーを中心に評価要素の一つひとつについて話し合い改善を進めてくれており、雰囲気がどんどん良くなってきていると感じています。 M社 代表取締役社長

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    本コラムが掲載されている
    月刊Car Business 2019年第4号
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シニアコンサルタント 瀬野 幸洋 Yukihiro Seno

1986年に大手経営コンサルタント会社入社後、95年から新車ディーラー(カーディーラー)1180拠点以上を支援。営業スタッフの商談力強化、店長のマネジメント力強化等のテーマに取り組む。

管理者を対象にした内観研修(M-SIP)を長年に亘って担当し、自動車販売店の店長や工場長の自己革新事例には事欠かない。

管理者やリーダー社員の仕事に取り組む姿勢を変革し、その成長に寄与することをライフワークとしている。

自動車業界の後継者育成にも数多く関与し、日刊自動車新聞社発行の「クルマ屋を継いで良かった!」の著者でもある。

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