経営コラムColumn

企画力の高い人材を育成し、生産性を向上する

企画業務など知識労働の現状と課題

ある企画を部下に任せたが、何度やらせても期待水準に届かず、結局は、自分でやらざるを得なくなった経験はありませんか。
知識労働は、人により品質やスピードに大きなバラツキがあり、品質不良による手戻りや納期遅れ、過剰品質による時間の浪費など多くの無駄が生じています。
知識労働の生産性が低い理由は、上司・部下ともに、正しい仕事の仕方を学んでいないからです。肉体労働とは違い、知識労働は目に見えないので、早期の問題発見や助言が難しく、仕事の仕方を教えるのが難しい特性があります。だから、知識労働の生産性を高めるには、業務を可視化し、適切なタイミングで助言することが必要なのです。

正しい仕事の仕方 3つの原則

1.業務を分解する。
早期の問題発見や助言がしやすいように、業務を適切な単位に分解します。
例えば、企画書を作成する場合、「情報収集、現状分析、課題検討、目標設定、施策検討、スケジュール設定など」に分解します。仮に総工数10時間かかる企画書作成ならば、30分~120分の単位で業務を10個前後に分解します。
例えば、上司なら1時間でできる情報収集を、部下は3時間と過剰な工数見積をしていることがあります。手元にあるデータの流用で十分なのに、必要のない情報も改めて収集するつもりかもしれません。これは、背景や情報が共有されていないために発生した過剰品質による時間の浪費です。逆に、見積工数が過少な場合は、抜け漏れなど品質不良による手戻りの発生や納期遅れが生じます。

2.目的とゴールイメージを明確にする。
部下に仕事を与える場合、上司が助言しなくても独力で適正な品質と工数、納期で仕上られるか否かを早期に見極めることが必要です。
助言が必要と思われる仕事は、まず、業務設計書や企画書などの骨子を部下に作成してもらい、目的とゴールイメージを確認します。多くの場合、ここで、認識ギャップが発見でき、現状や背景に関する情報や認識が共有できます。
このような正しい仕事の仕方が訓練されていない職場では、目的とゴールイメージに認識ギャップがあるケースが8割を超えています。その結果、手戻りや時間の浪費、納期遅れが多発し、労働生産性が低いのです。

3.レビューする。
レビューとは、「再調査する」の意味です。業務設計や企画書が適切かどうかを早い段階で確認し、問題を発見し、助言します。これにより、暗黙知(仕事のコツ)が共有され、能力向上が図れます。
例えば、「タブレット端末導入によるサービス入庫時説明の精度向上」のレビューでは、次のような問題発見と助言がなされます。「最終目的は、入庫全数の説明精度向上と顧客満足度向上だが、その仕事は、期間も1年を超え、総工数も100時間を大幅に超える。業務が大き過ぎて検証もし難いので、点検入庫に限定し、全数説明の徹底を一旦のゴールイメージとし、業務設計(期間6ヵ月、総工数30時間)を見直してください。」
このように、適切な単位で業務を分解することで、目的とゴールイメージが明確になり、手戻りや時間浪費を大幅に削減することができます。
また、レビューで大切なのは、「①業務の品質Quality、工数Cost、納期Deliveryを適正にする」とともに、「②部下の主体性、思考力を高める」ことが重要です。但し、指示型偏重の上司は、上記①のQCDは管理できても、②の主体性、思考力の高い人材を育成できない上司が多いと思います。この点にご関心のある方は、2017年第7号「質問指導のすすめ」をご参照ください。

近年、段取り研修を導入する企業が増えていますが、それでも生産性が向上しない職場では、「業務分解」はしていても、「目的とゴールイメージの明確化」、「早期に問題を発見し、助言するレビュー」ができていないように思います。

凡庸には規律、平凡には志、非凡には企画力が必要。

規律が乱れ、トラブルやクレームが多発、業績低迷している店舗には、規律が必要です。特に問題は無いが、業績や顧客満足度、人材育成などの面で優れた部分がない店舗には、志が必要です。優秀だが、新たなモデルの創造に挑戦する店舗には、企画力が必要です。
企業が飛躍するには、企画力の高い人材を育成することが重要です。本部の企画職だけでなく、店長にも改善活動やモデル創造などに挑戦させて、企画力の向上を求めていくことが必要です。その際、経営者は、適度なストレッチ、質問による指導を意識して、部下の主体性や思考力を高めるよう、ご自身のレビュー力に磨きをかけることが肝要です。
しかし、そもそも経営者自身が企画力に自信がない場合は、業務改善などの企画業務をコンサルタントなどと一緒に取組むことで鍛えることが先決です。

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代表取締役会長 沖 晋 Susumu Oki

1960年北海道生まれの九州育ち。1985年上智大学卒業後、大手経営コンサルタント会社入社。
業種業界問わず、戦略策定支援、人材育成支援等、多岐に亘るテーマで300社以上の企業に対してトップコンサルタントとしての指導実績を持つ。
営業力、商品力双方の強化による業績改善を得意とする。

また、実業進出後は、理念経営による人材育成、組織開発を重視するようになった。理念、戦略、商品力、現場まで首尾一貫した組織づくりによる企業再建も経験豊富。

2004年から車買取販売カーリンク本部の代表者となり実業にも進出。2019年現在100店舗展開中のカービジネス研究所取締役会長も兼務する。

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