経営コラムColumn

低迷店舗が前年比120%の獲得利益増大を実現 ~ビジョン・リーダーシップのすすめ~

低迷店舗の劇的改善

店長のOJTをしながら店舗を劇的に改善した事例をご紹介します。ビジョン・リーダーシップ訓練導入前、この店舗は、12ヵ月連続未達でしたが、導入翌月から6ヵ月連続で達成しています。その結果、2018年下半期の獲得利益(粗利+手数料収入)は達成率110%(全店93%)、前年比120%(同106%)を実現しました。

導入前の状況・・・クレームトラブル、叱責、ネガティブ、未達の悪循環

店長は低迷店舗の再建を託され、1年前に着任しましたが、中々、成果が出せず苦労していました。前任地では、係長2名を活用し、素晴らしい業績をあげていました。しかし、現在は、係長がいないため、段取りやマネジメントを店長が一手に引き受け抱え込んでしまい、店員とのコミュニケーション不足、クレームトラブル増大、叱責を繰返すという悪循環に陥っていました。その結果、店舗は同僚のことに無関心でネガティブな人が多く、ギスギスして暗く、業績も低迷していました。店長は、現状を打破したいが、どうしたら良いか分からないと悩んでいました。

店舗のビジョンを描き、店員個々人への期待事項を明示する

そこで、私は、店長にどんなお店にしたいかを尋ねました。その結果、「お客様の喜びを追求し、職場のコミュニケーションを改善する。そのために、社員全員が相手に感謝の念を持って気遣いができる人材になる。そして、社員全員が誇りを感じられる店舗にする。」という想いが明確になりました。
さらに、それを実現するには、どうしたら良いかを深堀してもらいました。「Aさんは自分よりもお客様の都合を優先して欲しい。Bさんはお客様の関心事を聴いて共感して欲しい。Cさんは笑顔を絶やさず、相手の目を見て大きな声で挨拶をして欲しい。Dさんは整備士や同僚などへの配慮が足りないので感謝の念をもって気遣いができるようになって欲しい。」など部下10人個別に期待事項を明示してもらいました。そして、期待事項の達成度を毎月、個別に評価し、改善した人には称賛を与え、改善が見られない人には要因や対策を一緒に検討し、必要に応じて教育しました。これを繰返すことで、わずか2ヵ月で目標を達成し、その後も連続達成しています。その結果、組織全体が自信に溢れ、活気づいています。

ビジョン・リーダーシップの効果

①人材がポジティブになり、組織が活性化する
②リーダーシップに優れた頼もしい人材が育つ
③顧客満足度が高まる

「皆で良い店舗をつくろう」というビジョン(志)を共有した上で、個人別に期待事項を明示し、個別面談を繰返すと、人材と組織が見違えるように変わります。期待事項と月次評価の個別面談が「自分のことをきちんと見てくれて、課題を指摘し期待を示してくれるのが嬉しい」と部下には好評でした。これで皆のモチベーションがアップしたようです。
ネガティブな言動が多かった人材が反省し、ポジティブな言動を心がけるとともに、同僚のネガティブな言動に対しても、「もっとポジティブになろうよ」と働きかけるようになりました。
「店長の右腕として店舗を牽引して欲しい」と期待した営業スタッフは、販サ両部門のメンバーに好ましいリーダーシップを発揮し、次期係長として頼もしく成長しています。
 
店長からも「この手法は凄いですね。良い店舗にしようと頑張ってもらうと人材が見違えるように育つことに気づきました。また、お客様からも、以前は、クレームばかりだったが、訓練が始まってからは、クレームが激減し、『○○さんが良くしてくれるので感謝しています。この店は皆さん感じが良いね。』といったお褒めの言葉を数多くもらえるようになった。」と大喜びでした。

ビジョン・リーダーシップの本質

業績は、顧客関係の結果でしかありません。顧客が増え、関係が強くなれば、業績は改善します。しかし、そのためには、商品力を強化し、人材を育てることが必要です。
「どんな店舗にしたいですか?」と質問すると、業績目標はあるが、このようなビジョン(顧客関係、商品力、人材育成、活性化した組織など)を描けていない店長が多くいます。これを描かなければ、いつまで経っても業績は改善できません。
また、「客単価×客数、活動量、品質、コスト、納期」といった従来の左脳思考のマネジメントだけでは限界があります。共感、物語、生きがい、遊び心、調和、デザインといった要素も重視するハイコンセプト(右脳プラスの左脳思考)のマネジメントに転換しなければ、飛躍することはできません。
結果管理からプロセス管理を重視する会社が増えていますが、ビジョンが明確でなければ、プロセス管理も無意味です。「お客様の喜びを追求し、職場のコミュニケーションを改善する。そのために、社員全員が相手に感謝の念を持って気遣いができる人材になる。・・・」というビジョンだからこそ、共感や気遣い、笑顔、生きがいなどを社員に求め、その教育指導に日々、注力するのです。これを追求する以外に、業績を改善する道はありません。
店長自身の想いを込めたビジョン(志)と改善計画書、個人別期待事項を作成し、皆で共有することにより、課題や関与方法がより的確で具体的なものになってきます。皆様もビジョン・リーダーシップに挑戦してみませんか。

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<推薦図書コーナー>
①ビジョナリー・カンパニー②飛躍の法則、ジェームズ・C・コリンズ著、日経PB社
②ハイコンセプト新しいことを考え出す人の時代、ダニエル・ピンク著、三笠書房
③夢とビジョンを語る技術、野口吉昭著、かんき出版
④物語戦略、内田和成監修、岩井琢磨・牧口松二著、日経BP社

沖 晋(略歴)
1960年 北海道生れ、九州育ち
1985年 経営コンサルティング会社 日本LCA入社
1994年 日本LCA常務取締役(自動車業界担当)就任
2005年 車買取カーリンク代表取締役社長就任
2011年 カービジネス研究所を設立し、独立
2018年 アビリティブルームコンサルティングを設立し、代表取締役会長就任
現在、アビリティブルームコンサルティング代表取締役会長、カービジネス研究所取締役会長

【仕事に対する想い】
人材の主体性を高め、お客様の喜びを追求し、創意工夫を重ねる組織を育てることが私の喜びです。
尊敬を集める企業は、理念、戦略、商品力、現場力に磨きをかけるとともに、それらの各要素が整合した首尾一貫した組織を作っています。今は、未熟でも、素晴らしい企業づくりに情熱を持っている経営者と社員の皆様の心強いパートナーとして必ずお役に立ちます。

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    月刊カービジネス 2019年第6号
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代表取締役会長 沖 晋 Susumu Oki

1960年北海道生まれの九州育ち。1985年上智大学卒業後、大手経営コンサルタント会社入社。
業種業界問わず、戦略策定支援、人材育成支援等、多岐に亘るテーマで300社以上の企業に対してトップコンサルタントとしての指導実績を持つ。
営業力、商品力双方の強化による業績改善を得意とする。

また、実業進出後は、理念経営による人材育成、組織開発を重視するようになった。理念、戦略、商品力、現場まで首尾一貫した組織づくりによる企業再建も経験豊富。

2004年から車買取販売カーリンク本部の代表者となり実業にも進出。2019年現在100店舗展開中のカービジネス研究所取締役会長も兼務する。

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