経営コラムColumn

工場長の革新で新車増販は実現する

工場長の責任はサービス業績だけか?

新車ディーラー(カーディーラー)における工場長の仕事はサービス部門の業績確保や組織づくりですが、最近では新車販売を伸ばすための役割も大きくなっています。実際、ある新車ディーラー(カーディーラー)では、工場長を店舗のNo2と位置づけ、店長と共に店舗業績に関する責任を担うという評価制度を取り入れています。そして、意識の高い工場長は、その意図を汲み、新車増販につながる「案件トス」を増やす取り組みを行っています。

新車増販につながる「案件トス」とは?

「案件トス」とは、お客様が点検や修理で入庫した際、お車の状態を確認し、不具合が目立つようであればメカニックが乗り換えの提案をして、営業スタッフに話しを引き継ぐ仕組みです。「修理で結構な費用がかかりそうです。車歴も長くなってきているので、修理しても、別の箇所が悪くなる可能性もあります。むしろ、乗り換えを検討された方が良いかもしれませんね」と担当のメカニックから指摘されると、お客様も真面目に乗り換えを考えるケースが多く、引き継いだ営業スタッフも商談が進めやすく、受注率も高くなります。

工場長の意識を変えた上司の言葉

「案件トス」を増やし、新車増販を図るためには、工場長の意識革新が不可欠です。
長期間、新車販売の業績が不振だった店舗で工場長を含むリーダー陣の研修を実施したことがあります。この会社でも、工場長にも店舗全体の業績責任があることになっていましたので、他の店舗では、工場長の指導の下、案件トスの仕組みを構築して新車増販を実現していました。しかし、この工場長は「自分はサービスのことしか解らない。車販については、店長に頑張ってもらうしかない」と逃げ腰でした。

この工場長は、人とのコミュニケーションが苦手なため整備士になった経緯があり、店舗でも十分にリーダーシップが取れないと感じていました。

研修では、車両部長から「当社では工場長は店舗のNo2だ。店長が不在の場合は工場長が責任者という位置づけになる。販売が厳しいのであればNo2である工場長が全力で努力するべきではないか?」と指摘がありました。店長からは「店舗ではメカニックはもちろん、営業スタッフも全員が工場長のことを信頼している。君がその気になれば、メンバー全員が協力してくれると思うよ」とアドバイスがありました。その他のメンバーからも、工場長という立場や期待事項について、様々な意見やアドバイスがありました。

工場長の革新で新車増販が実現した!

それらの言葉を聞いて、工場長は改めてNo2という立場を自覚し、店舗でリーダーシップを発揮することを決意しました。研修前は、新車販売は自分の仕事ではない。新車販売台数が伸びないのは自分の責任ではないと思っていました。しかし、上司や仲間の話しを聞く中で意識が大きく変わりました。そして「案件トスを増やす」ことを改善テーマに掲げ、全力で取り組むことを決意したのです。

研修後は、案件トスで成功している店舗に赴いて勉強し、その内容を自店舗のメンバー全員に教育しました。営業スタッフに対しては、「低年式や多走行のお客様への点検や(販促の)無料オイル交換の呼込みを徹底してくれ。入庫時にメカニックに情報を伝えてもらえば、案件トスにつなげてくれるはずだ」と指導しました。
店内では常時、営業スタッフとメカニックが打合せをする姿がみられ、組織の雰囲気もよくなりました。そして、この取り組みを始めて2ヶ月後には、新車販売台数の目標を達成し、その後も好調を持続しています。

 新車販売が伸び悩んでいる店舗で、まだ、この案件トスに十分に取り組んでないのであれば、工場長に責任と役割を与えて、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

レッツチャレンジ

  1. 「新車増販」をテーマに、店舗のマネージャー、リーダー陣で話し合いの機会をつくりましょう。
  2. サービス部門が新車増販に協力するための問題点を徹底的に議論しましょう。
  3. 工場長を中心に「案件トス」を増やすための取り組み方を研究しましょう。
  4. 店舗のメンバー全員に対して「案件トス」の取り組みを共有し、プロジェクトを推進しましょう。
  5. 案件トスの成功事例を共有し、率先して取り組んだスタッフやメカニックを称賛し動機づけをしましょう。

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「案件トス導入チェックリスト」

実際に「案件トス」に取り組んだ工場長の声

メカニックの指導はできるものの、店舗業績、特に新車販売には無頓着で良く店長から叱られていました。研修をきっかけに危機感を持ち、「案件トス」の取り組みをスタートしました。新車増販につながるので営業スタッフも積極的に呼び込みするようになりました。目的が解ればメカニックも積極的に案件トスをしてくれます。新車販売台数が改善し、組織のコミュニケーションもすごく良くなり、自分の自信にもつながりました。  S社 工場長

新車販売の成績については店長の責任で自分には関係無いと思っていました。しかし、当社の評価制度では店舗業績全体が良くならないとマネージャーは評価されません。研修を受けてその本当の意味を理解し意識が大きく変わりました。メカニックには常時指導をしていますので案件トスの件数も増えてきました。今ではその案件をどう決めるのか?について営業スタッフと話す時間の方が増えてきている状態です。将来は自分が店長になりたいと思うようになりました。               N社 店長代理(工場長)

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    本コラムが掲載されている
    月刊Car Business 2019年第5号
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シニアコンサルタント 瀬野 幸洋 Yukihiro Seno

1986年に大手経営コンサルタント会社入社後、95年から新車ディーラー(カーディーラー)1180拠点以上を支援。営業スタッフの商談力強化、店長のマネジメント力強化等のテーマに取り組む。

管理者を対象にした内観研修(M-SIP)を長年に亘って担当し、自動車販売店の店長や工場長の自己革新事例には事欠かない。

管理者やリーダー社員の仕事に取り組む姿勢を変革し、その成長に寄与することをライフワークとしている。

自動車業界の後継者育成にも数多く関与し、日刊自動車新聞社発行の「クルマ屋を継いで良かった!」の著者でもある。

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