経営コラムColumn

残価設定型プランの営業クリニックで浮き彫りになった課題⑤~人材育成には相互理解が重要~

  • ※営業クリニックとは
    残クレ商談のロープレによる診断と、ワンポイントアドバイスという講義を組み合わせたプログラムです。

効果的な人材育成には「相互理解」が鍵

4回に渡り「営業クリニック」で浮き彫りになった課題と解決策に触れてきました。それでは、どのように解決に取り組めば、効果的に習熟できるのでしょうか?
それには「相互理解」が必要です。上司から見れば、部下を育成するために「彼を理解すること」が大切です。一方、部下は「素直に自身をさらけ出し、上司や周囲の助言を受け止める」ことが必要です。

人材を見違えるように育成するフィードバック成功条件:「ジョハリの窓」

課題解決に、残クレ商談に限らず「商談全行程のフルスペックロープレを実施しましょう」と推奨してきました。そこで最も重要なのが、観察後のフィードバック(助言)です。その際、上司・周囲と部下の相互理解によって成長スピードが大きく左右します。そこで、相互理解の促進に必要な「ジョハリの窓」を活用していきます。

  • ※ジョハリの窓とは
    心理学者ジョセフ・ルフトとハリ・インガムが発表した「対人関係における気づきのグラフモデル」

私にわかっている、他人にわかっていない「秘密の窓」の自己開示(ジョハリの窓・左下)

フルスペックロープレ後、実施スタッフは、観察者の上司に対し、自身のロープレを振り返り、良かった点、改善すべき点を伝えます。その時に「秘密の窓」を隠さず、自己開示することが重要です。
店長に「実は残クレを良い商品だと思えない」や「残クレは、お年寄り、年金暮らしのお客様には向かない」とデメリットに感じる点を正直に開示することが成長の近道です。この一言で、店長は、この部下の課題を理解でき的確な助言ができるのです。

私にわかっていない、他人にわかっている「盲目の窓」へのフィードバック(同・右上)

次に、店長は観察に基づき、フィードバックします。その時に、本人が気づかず、店長しか発見できなかった課題「盲目の窓」を指摘します。例えば「笑顔が少ない、特に商品説明すると、笑顔が無くなる」「お客様が“同居の両親のためにスライドドアや低床が気になっている”と伝えたのに、全く受け止めていない」などと、指摘してください。
一方、スタッフは、素直な気持ちで指摘された内容を理解し、店長に感謝の気持ちを持って助言を受け止めることが必要です。

ジョハリの窓は、人材育成以外に、プロジェクト推進・組織活性化にも有効

この考え方は、人材育成だけでなく、プロジェクトや会議でも有効です。自分が感じている問題点、理解不足な点を開示する、また、周囲が気付かないことでも事象を観察し気づいた人が素直にフィードバックすることで、思わぬ改善策が見つかります。プロジェクトテーマ上の問題や組織の課題をチームで解決できた「成功体験」を積むことができれば、チームがより強くなり活性化します。
トップの皆様は、チームワーク向上に向けて、この相互理解の促進に注力しているでしょうか。

レッツチャレンジ

  1. 残クレやその他、様々なテーマでフルペックロープレを実施します。
  2. 実施者から自身のロープレを振り返り「良かった点」「改善すべき点」を伝える。
  3. 実施者が感じる「理解不足」や「自信が無い点」を自己開示してください。
  4. 店長やその他の観察者は、「良かった点」からフィードバックしてあげます。
  5. 次に実施者が気づいていない点、「改善すべき点」を臆することなく指摘ください。

導入企業の声

  • 恥ずかしながら、「秘密の窓」を開示したら、周囲から簡単にアドバイスをもらえました。もっと早く開示していれば、成長が早かったと思います。(トヨタAさん)

 

  • 私は、店長から「盲目の窓」を指摘してもらい、やっと自分の課題が理解できました。試乗車を活用して説明する際、お客様との距離がとても遠く、お客様の発する言葉を受け止めていなかったのです。これから気を付けたいと思います。(日産Bさん)

 

  • 先輩に対し、商談上とても気になる「悪い癖」、「指の差し方や使い方」を見つけて勇気を出して指摘しました。先輩は受け止めてくれて、「良く指摘してくれた。今後気を付けて直していく、ありがとう」と言われました。とても嬉しかったです。(ホンダCさん)

 

  • フルスペックロープレでじっくり観察すると、スタッフの課題がどんどん見えてきました。また、これまで指摘してもスタッフは聞いてくれていないように感じていましたが、「ジョハリの窓」を理解した後は、素直に受け止めてくれます。成長に必要な鍵だと理解してくれたんだと思います。(トヨタ D店長)
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    本コラムが掲載されている
    月刊Car Business 2017年第9号
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代表取締役社長 寒川 誉浩 Takahiro Samukawa

1992年に大手経営コンサルタント会社入社後、95年から新車ディーラー(カーディーラー)100拠点を支援。2002年に残価クレジットFC本部支援、2006年には、委託販売のカーリンクチェーンの本部構築、数多くの研修やノウハウ開発、理念経営、CS向上支援を実践。

営業スタッフの商談力強化、店長のマネジメント力強化から、経営理念の浸透支援、経営戦略策定支援まで自動車販売業に対して幅広い支援実績を持っている。

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