経営コラムColumn

法人営業の成功事例に学ぶ

法人営業の成功事例とそのポイント

今号は、最近、注目され始めた法人営業について、その要諦(ポイント)を成果事例とともに解説します。コスト重視と思われがちな法人営業ですが、社長や車両担当者との信頼関係づくりや安全性重視、走行距離が短くなるなど、多様化するニーズに対応することが重要です。

成果事例その1

  • 顧客の勤め先を紹介してもらい健康食品の製造・卸売業の車両担当者と面談。
    自己アピールシートにあった野球観戦の話題で盛り上がり、自社のネットワークや成功事例を紹介すると興味を持ってもらいました。後から聞きましたが、他メーカーと古くから取引があり、現車は当社より価格の安い車両でしたので、当初は10分ぐらいの面談で帰ってもらおうと思っていたそうです。
    商品の配送の状況や市内の走行距離などを聴き、後日、当社の推奨車の使い勝手や耐久性、燃費や荷室の違いなどを比較した提案書を説明したところ、導入の検討対象となりました。さらに、試乗車で訪問し、運転手に実際の商品を荷室に載せてもらったところ、荷室の開口部の形状も気に入ってもらい、受注しました。また、「当社のことを本当に良く考えてくれてありがとう」と感謝されました。

ポイント解説

  1. 初期接触で信頼関係を築く。
    飛込み訪問や紹介などで社用車の入替・増車に関わる方と面談できることになった場合に重要なのが、信頼関係を築くことです。そのためには、自社で実際に代替・増車いただいた成功事例やお客様の喜びの声、自社の提供できるサービスなどをコンパクトに説明して、面談者に「この営業スタッフは何か役に立ちそうだ」と思ってもらう必要があります。
  2. 情報収集ではニーズを深掘りする。
    お客様が本当に望んでいることを聴き出すには、質問を羅列するだけではなく、なぜそう考えているのかについて踏み込んだ質問をすることが重要です。また、車両担当者だけではなく、運転手に話を聴いてみることで使い勝手や困っていることなど重要な情報が得られることもあります。
  3. コスト負けでも総合提案で勝つ。
    コストで負けていても用途や距離などから訴求できるポイントがあったり、メーカーや自社、自店舗の良さ、営業スタッフの熱意などで受注することもしばしばあります。簡単にあきらめず、勝てるポイントを探ることと本当にお客様のことを考えた提案やアクションが重要です。また、対応の素早さや的確さは信頼獲得につながるケースが多くあります。

成果事例その2

  • 自社客法人から取引先の不動産業の社長を紹介してもらい訪問。
    事前に紹介者から聞いていたゴルフの話と、創業時に物件が見つからずに契約ができなかった苦労話や理念の「生涯のパートナー」、「「社員とその家族を大切にする」に込めた想いなどを聴いて共感したところ、とても気に入られました。
    近々、5年目の車検となる車両があるとのことでしたが、走行距離数が減ったこともあり、10万kmも走っていないため、車検を通したいとの要望でしたが、いろいろと話しを聴くと冬場にスリップなどでちょっとした事故が多いことが分かりました。そこで、大きな事故があった場合の保険料アップや事故処理に取られる時間、手間などのリスクと最新の安全性能などを説明すると詳しい話を聞きたいと言われました。
    すぐに、保険のリスクに関する資料に加えて、現車との燃費の違い、メンテナンスパック、長期保険などの維持費や下取額が年々下がることなどのトータルコストに関する資料、買取と残価設定型プランの違いをまとめて提案した結果、「車のことは君に任せる」と言ってもらい、残価設定型プランでの入替となりました。

ポイント解説

  1. 「共感」で相手との距離を縮める(仲良くなる)。
    面談者が創業社長であれば創業時の苦労や事業運営で大事にしていること、後継者であれば、社長となってからの苦労や大事にしていることなどを聴き、その話に共感し、面談者との距離を縮めることが重要です。車両担当者であれば現在の仕事のやりがいや悩み、車両管理の苦労などを聴き、共感します。そのために、事前に紹介者から情報を聴いたり、ホームページを確認したりすることでそのきっかけを作ることが有効です。
  2. トータルコストで提案する。
    顧客ニーズに合った車種提案に加えて、車両価格だけでなく、維持費(燃費、メンテナンス費用、保険料)や入替え時の下取り価格などのトータルコストの提案により、納得性の高い商談となります。
  3. 買い方を提案する。
    「提案」とは、「提案車両の見積りを出すこと」だけではありません。買取、割賦(残価設定型プラン)、リースのそれぞれのメリット、デメリットを整理し、顧客ニーズに合った「買い方を提案」することも重要です。
  4. 会社の理念や方針に沿った提案をする。
    最近は、社員を大事にすることを理念や方針とする企業が増えてきました。他にも、車選びに影響のある理念や方針を掲げている企業もあります。価格競争から脱却するためにも提案の視点として持ちたいものです。

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    月刊Car Business 2018年第3号
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シニアコンサルタント 設楽 教之 Noriyuki Shidara

大手経営コンサルタント会社入社後、多くの生産性改善・営業力強化コンサルティングを担当。
その後管理本部長として、総務・法務・人事、財務などを統括。
現在は、法人営業部や一般店の法人営業の取組支援のほか、管理者やエンジニアの意識改革、営業スタッフの商談力強化に取り組んでいる。

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