経営コラムColumn

未来予測と勝ち残る条件~電動化、自動運転、モビリティーサービス、ハイ・コンセプト社会がもたらす環境変化~

「ライドシェア、自動運転、電動化」の話題が2年前から増え、自動車業界の環境変化のスピード感が増してきました。トヨタは、国内営業組織再編(チャネル別から地域別)、法人開拓強化、モビリティサービスの新会社設立などを発表しています。
メーカーの危機感は強いですが、販売店の危機感は、まだ弱いように感じます。勝ち残るためには、できるだけ早期に、想像力を鍛え、将来に備える必要があります。
「未来予測と今後の成功要因」に関する私見を下記に提示します。賛否両論あると思いますが、皆様もぜひ自分自身で考えてみてください。

20年後の国内自動車販売業界の予測

  1. 自動運転による無人タクシーは、運転手が不要になり、稼働率も向上するので、運賃も半値以下になる。ライドシェアは一時増えるが、次第に無人タクシーに淘汰される。
  2. 少子高齢化、若者の車離れに加え、レンタカー、カーシェアリング、ライドシェア、無人タクシーなどの利用が増えるので、自家用乗用車台数が半減する。
  3. モビリティサービスも含め、商用車が増える。
  4. 四輪保有台数は、現在7,700万台(乗用車6,000万台、商用車1,700万台)から20年後5,500万台(乗用車3,500万台、商用車2,000万台)に減る。
  5. 電動化、自動運転などの商品開発が加速し、代替需要が増え続ければ、年間販売台数は現在500万台を維持するが、代替需要が一巡すれば、400万台を下回る。
  6. 電気自動車が増えると、部品交換が減り、整備費用が安くなる。その結果、総整備売上は、現在5.4兆円から3兆円に減る。整備士不足は解消する。

社会の変化

ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代、ダニエル・ピンク(著)、大前研一(訳)、三笠書房より引用抜粋
経済発展は、豊かさをもたらしたが、逆に人々は経済的豊かさよりも、生活の意義を重視するようになった。その結果、品質や価格などの左脳的価値が相対的に低下し、デザインや物語、共感などの右脳的価値が高まった。このような右脳的価値を提供することを、ハイ・コンセプトと言う。右脳プラスの左脳思考とも言う。
ハイ・コンセプトで活躍する人は、6つの感性(デザイン、物語、調和、共感、遊び、生きがい)を磨いている。

共感力、啓発力が求められる時代

お客様が「この人から買いたい。」と思えるのは、共感力が高い人材です。しかし、共感力が高い営業スタッフは、1割もいません。商品力があるから売れているが、「できれば、担当者を変えて欲しい。」と考えるお客様が多いだろうと感じます。
また、啓発力も大切です。例えば、残価保証プランは、新車を3年毎にリーズナブルに代替できる仕組みです。本来は、最新のデザイン、快適装備、安全性など、楽しくて、ワクワクする右脳的(調和的)価値を訴求することが重要ですが、多くの営業スタッフは、「月々が安い」という左脳的価値しか訴求できていません。
これからの時代、ハイコンセプト(右脳プラスの左脳的価値)を提供できる水準まで啓発力を鍛えることが重要です。また、これができれば、価格競争からも脱却できます。
将来的に、自動車以外の領域で顧客生涯価値を増大するには、「共感力、啓発力」の高い人材の育成が不可欠です。

勝ち残りの条件

  1. 縮小市場で勝ち残るには、シェアを拡大し、事業規模を維持拡大することが必須です。そのためには、残価保証プランや買取促進などで早期代替を増やすとともに、法人開拓やモビリティサービスなどへの進出も必要です。
  2. 保険、介護、保育所、事業所向けサービスなど、自動車以外の領域で顧客生涯価値を増大することも必要です。
  3. そのためには、共感力、啓発力の高い人材を育成することが重要です。共感力、啓発力の高い人材がいなければ、早期代替、紹介獲得、法人開拓による事業拡大も、自動車以外の領域での顧客生涯価値の増大も成しえません。
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代表取締役会長 沖 晋 Susumu Oki

1985年大手経営コンサルタント会社入社後、業種業界問わず、戦略策定支援、人材育成支援等、多岐に亘るテーマで300社以上の企業に対してトップコンサルタントとしての指導実績を持つ。

自動車業界においても、トヨタ、日産系の大手新車ディーラー(カーディーラー)の組織ぐるみの営業力強化PJのリーダーとして目覚ましい活躍を続け、数多くの成功事例を創出。

2004年から自動車販売・買取事業を推進する企業の代表となり実業分野にも進出。

中古車委託販売のビジネスモデルを研究・開発し、車販強化を指向する整備業、販売店、SS等にそのノウハウを提供する委託販売チェーンのカーリンクを全国展開させた。

業界を俯瞰し冷静且つ分析的にクライアント企業の課題を明示する戦略眼は他に類を見ない。

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