未来予測と勝ち残る条件~電動化、自動運転、モビリティーサービス、ハイ・コンセプト社会がもたらす環境変化~
「ライドシェア、自動運転、電動化」の話題が2年前から増え、自動車業界の環境変化のスピード感が増してきました。トヨタは、国内営業組織再編(チャネル別から地域別)、法人開拓強化、モビリティサービスの新会社設立などを発表しています。
メーカーの危機感は強いですが、販売店の危機感は、まだ弱いように感じます。勝ち残るためには、できるだけ早期に、想像力を鍛え、将来に備える必要があります。
「未来予測と今後の成功要因」に関する私見を下記に提示します。賛否両論あると思いますが、皆様もぜひ自分自身で考えてみてください。
20年後の国内自動車販売業界の予測
- 自動運転による無人タクシーは、運転手が不要になり、稼働率も向上するので、運賃も半値以下になる。ライドシェアは一時増えるが、次第に無人タクシーに淘汰される。
- 少子高齢化、若者の車離れに加え、レンタカー、カーシェアリング、ライドシェア、無人タクシーなどの利用が増えるので、自家用乗用車台数が半減する。
- モビリティサービスも含め、商用車が増える。
- 四輪保有台数は、現在7,700万台(乗用車6,000万台、商用車1,700万台)から20年後5,500万台(乗用車3,500万台、商用車2,000万台)に減る。
- 電動化、自動運転などの商品開発が加速し、代替需要が増え続ければ、年間販売台数は現在500万台を維持するが、代替需要が一巡すれば、400万台を下回る。
- 電気自動車が増えると、部品交換が減り、整備費用が安くなる。その結果、総整備売上は、現在5.4兆円から3兆円に減る。整備士不足は解消する。
社会の変化
ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代、ダニエル・ピンク(著)、大前研一(訳)、三笠書房より引用抜粋
経済発展は、豊かさをもたらしたが、逆に人々は経済的豊かさよりも、生活の意義を重視するようになった。その結果、品質や価格などの左脳的価値が相対的に低下し、デザインや物語、共感などの右脳的価値が高まった。このような右脳的価値を提供することを、ハイ・コンセプトと言う。右脳プラスの左脳思考とも言う。
ハイ・コンセプトで活躍する人は、6つの感性(デザイン、物語、調和、共感、遊び、生きがい)を磨いている。
共感力、啓発力が求められる時代
お客様が「この人から買いたい。」と思えるのは、共感力が高い人材です。しかし、共感力が高い営業スタッフは、1割もいません。商品力があるから売れているが、「できれば、担当者を変えて欲しい。」と考えるお客様が多いだろうと感じます。
また、啓発力も大切です。例えば、残価保証プランは、新車を3年毎にリーズナブルに代替できる仕組みです。本来は、最新のデザイン、快適装備、安全性など、楽しくて、ワクワクする右脳的(調和的)価値を訴求することが重要ですが、多くの営業スタッフは、「月々が安い」という左脳的価値しか訴求できていません。
これからの時代、ハイコンセプト(右脳プラスの左脳的価値)を提供できる水準まで啓発力を鍛えることが重要です。また、これができれば、価格競争からも脱却できます。
将来的に、自動車以外の領域で顧客生涯価値を増大するには、「共感力、啓発力」の高い人材の育成が不可欠です。
勝ち残りの条件
- 縮小市場で勝ち残るには、シェアを拡大し、事業規模を維持拡大することが必須です。そのためには、残価保証プランや買取促進などで早期代替を増やすとともに、法人開拓やモビリティサービスなどへの進出も必要です。
- 保険、介護、保育所、事業所向けサービスなど、自動車以外の領域で顧客生涯価値を増大することも必要です。
- そのためには、共感力、啓発力の高い人材を育成することが重要です。共感力、啓発力の高い人材がいなければ、早期代替、紹介獲得、法人開拓による事業拡大も、自動車以外の領域での顧客生涯価値の増大も成しえません。