親密客を増やし、NPS(顧客推奨度)を劇的に改善する
~ビジョン・リーダーシップのすすめ~今回は2月4日に開催した「新春経営シンポジウム」の講演内容を一部抜粋してご紹介します。
縮小市場、全車種併売の時代、カーディーラーが勝ち残るにはお客様との関係強化が不可欠です。本稿では、顧客関係強化のノウハウとNPS(顧客推奨度)が劇的に改善した事例をご紹介します。
※NPS=(推奨者の割合)-(批判者の割合)
推奨者:満足、中立者:満足も不満もない、批判者:不満
顧客関係性は、顧客満足度や業績、組織風土と強い相関があります。下表のレベル1と2は、NPS、業績ともに低い。レベル3は、NPSが高く、入庫や割賦、保険などバリュー商品が強い。レベル4と5は、NPSが高く、併有車代替や紹介が多い傾向があります。従って、最低でも3、できれば、4や5を目指す必要があります。
NPSの劇的改善
この店舗(店員28名)は、2015年10月に新装開店したが、期待に反して業績が低迷していました。しかし、2019年秋にビジョン・リーダーシップ訓練を導入し、わずか3ヵ月で笑顔と活気があふれる店舗に生まれ変わりました。購入時NPS(7-9月31% → 10-12月74%)も劇的に改善しました。上表「顧客関係レベル」で言うと、1から3にレベルアップしました。
導入前の状況
2019年7月、店舗の立て直しを託され、H店長(48才)が着任。クレームやトラブルの多さ、店員間の信頼関係の薄さなど、現状を把握した上で、「店を良くしたい」との思いを店員に語りかけるが、「店長、この店は何をやっても無理ですよ」と皆が諦めていた。マネージャー2名と議論しても店員の批判ばかり。発想がネガティブでポジティブなアイデアが全く出なかった。「必ず立て直して見せる」との強い気持ちで着任したH店長も、2ヵ月後には、「私には無理かもしれない」と自信を失いかけた。部長に相談すると、「大丈夫。必ず良くなる。」と励まされ、ビジョン・リーダーシップ訓練が始まった。H店長もこのチャンスに望みをかけた。
店舗ビジョンの検討開始
2019年8月下旬~9月、幹部3名で2時間前後のミーティングを10回繰り返し、現状と課題の認識を共有し、ビジョンを検討した。低迷の要因は、おもてなしの姿勢の弱さ、店員間の信頼関係の弱さもあるが、根本は、幹部陣の他人事思考にあった。
ある時、サービスマネージャーが「販売マネージャーはフロアマネジメントを全くやらない」と指摘。理由を聞くと、書類や集計、進捗などの管理を一手に引き受け、忙殺されている事実が判明し、H店長も分担することにした。また、「サービスマネージャーは、販売のことを考えてくれない」との指摘があった。「細かい管理があり忙しい」との出来ない言い訳が出たが、「工場長の育成のためにも業務を移管しよう」と助言。このような議論を重ね、幹部3名でフロアマネジメントに注力することを決めた。
その他の諸問題も議論し、店員が苦しんでいる現実を幹部3名が直視し、店舗を本気で改革しようと合意した。ビジョン検討を重ね遠慮なく指摘し合える信頼関係を築いた。その結果、9月半ば頃から、マネージャー2名が変わり始めた。
・販売マネージャー(54才)は、事務に忙殺され、部下の相談にも「本部に直接聞いてくれ」と突き放すことが多く、頼りがいが無く、誰も相談しなくなっていた。しかし、9月半ばから変わり始めた。指摘を謙虚に受け止め、フロアマネジメントによる親身な部下指導に注力した結果、「困ったときは必ず助けてくれる」と信頼感が高まった。
・サービスマネージャー(52才)も前向きな言動が増えた。フロアマネジメントによるOJTも増え、営業スタッフとの関わりも増えた。
店員の変革エピソード
幹部の変革により、10月半ばには、店員たちも「私たちも変われる」と自信を持ち始めた。
・工場長(40才)は、もともとリーダーシップはあったが、営業スタッフや幹部への意見が増えた。
・アドバイザーリーダー(47才)は、忙しいと機嫌が悪くなるので、鈑金見積も機嫌が良い時にしか相談できなかった。今では、気遣いができるようになり、皆も相談しやすくなったと喜んでいる。
・若手エンジニアのSさん(21才)は、会話が苦手で部長が挨拶しても顔を上げなかった。今は、自分から積極的に挨拶するし、お客様とも世間話をし、談笑できるようになった。
・営業スタッフリーダーのTさん(40才)は、主体性が高まり、木曜日に土日の入庫予約が少ないと呼び込みをやろうとリーダーシップを発揮するようになった。若手のOJTも変わった。聞かれたら答える程度だったのが、今では、入庫客対応の前後などこまめに気遣い親身に指導するようになった。
・若手営業スタッフのFさん(23才)は、「上司や先輩に相談しても誰も助けてくれない。仕事が上手くいかず楽しくない。」と何度も退職を申し出ていた。しかし、周囲の協力が得られやすくなり、成功体験を積んだ。今では、「このまま営業スタッフとして成長したい。仕事は楽しくなったが、まだ60点。お客様に喜んでもらうために何でも言い合える活気ある店舗にしたい。」と人が変わったように仕事に前向きに取組み、成果もあげている。
H店長の所感
やる気が無い、他人に無関心、身勝手な店員が多数いたが、今では、チーム力が高まり、ベクトルが一致してきた。
ビジョン・リーダーシップ訓練は、やって本当に良かった。仕事が苦悩から楽しみに変わり、やりがいがあった。仕事が楽しいと感じる店員も、前は1割しかいなかったのが、今は6割を超えたと思う。
苦悩の原因は、マネージャーや店員に対する自分自身の理解不足にあったが、討議や面談を重ねることで理解が深まり、信頼関係が築けた。また、思いはあったが、書面に表すことで思考が深まり、店員にも正しく伝わり、スピーディーに展開できることを実感しました。
最後に
顧客関係をより良くするビジョン・リーダーシップは、利害対立を乗り越えて、組織一丸となるために極めて効果的な手法です。皆様もビジョン・リーダーシップに取組んでみませんか?
2020年2月4日新春経営シンポジウムの基調講演
「差別化戦略とビジョン・リーダーシップ」の資料とDVDをプレゼントします。