経営コラムColumn

高圧的だった工場長が革新し、組織を活性化させた

退職者を続出させた工場長

Sさんは43歳で工場長になってからの8年間、サービス粗利さえ達成できればよいと、感情的に威圧する指導を繰り返しました。その結果、部下の不満が絶えず、退職者が続出し、組織が疲弊しました。

そんな中、マネジメント研修が実施され、Sさんを含めたベテラン工場長3名と、若手の工場長2名が参加することになりました。研修など役に立たないだろうと高を括っていましたが、マネージャーとしての自身の行動を見つめ直す360度評価とグループ内観に入り、様子が変わり始めます。『知っていることと出来ていることは違う』と研修で習ったがやり過ごしていた言葉が、現実として突き刺さってきたのです。

グループ内観での気づき

360度評価では、

『仕事の計画と手順について、部下が納得するまで十分緻密に打合せを
しているか』
『自分自身の都合よりも、仕事の都合を優先させているか』

といった、マネージャーとして、自分はできていると評価している行動項目も、上司と部下はできていないと評価していました。
さらに

『自己の努力について不足だと感じ反省しているか』

では上司、部下ともに評価が最も低く、講師から、「自分勝手な振る舞いで部下からは全く信頼されていない」と指摘されました。それでも我が強いSさんは素直に受け入れず、「部下が自分で考えるよう指導している」、「反省するより改善を示したい」などと、他責の発言を繰り返したのです。

その時、同僚の工場長達から、「S工場長は電話で用件を依頼しても、いつも『じゃあA君にやらせます』って答えて、自分でやらないですよね。結果がよくなくても、責任を取らないで逃げますよね」、「話はうまいけど、人の話を聞いてないですよね」との発言が続きました。
流石にこの指摘は深く胸に刺さり、Sさんの顔色が変わりました。そして、しばらく黙った後、「自分の考えを押し付けて、部下のことを理解しようとしなかったので、辞めていった。部下を育てることのできる工場長になりたい」と想いを伝え、「人生で初めて、素直に人のアドバイスを聞けた。ありがとうございます。感謝の気持ちでいっぱいです」と発言したのです。Sさんは自己革新テーマを『周囲への感謝の気持を常に持ち、部下を愛して、育てる』とし、他の工場長達に宣言しました。

3つの実践事項で自己革新がスタート

気づきを得ても、行動が変わらなければ全く意味がありません。何を実行すれば「できている」状態になるのかを工場長全員で考え、Sさんは次の3つの実践事項を決め、毎日の活動を報告することを約束しました。

  1. 毎日全員に、感謝の気持を伝える
  2. 現場に出て、「やらせる」ではなく、「自分もやる」を実践する
  3. 全社メンテナンスパック加入件数増加施策の推進

1ヶ月後の研修では振り返り内観を実施し、Sさんは、「部下の話しをまず聞くことができるようになった。部下から感謝の言葉や相談が増え、コミュニケーションをもっと増やしたいと思う」と報告しました。さらに翌月には、上司・部下からともに行動が大きく変わったと評価され、「社会人人生で一番忙しいが、仕事がものすごく楽しい」と明るい表情で語りました。

そしてSさんの率いるサービス部門は、3月には過去最高粗利を上げるまでになったのです。次回にはS工場長のリーダーシップのもと組織が活性化していった様子をお伝えします。

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シニアコンサルタント 新谷 健夫 Takeo Shintani

1985年に大手経営コンサルタント会社入社後、2000年からグループ会社を立ち上げ、買取店や残価クレジットFC店の経営に携わる。2006年からはカーリンクチェーンの本部構築とともに、直営店舗を運営する。小集団活動など、現場に入り込んでの組織開発を中心に、豊富なコンサルティング経験を保有し、自動車販売店の店長や工場長の意識革新、マネジメント能力の向上、営業スタッフの商談力強化など、実務経験を活かした実践的な指導に定評がある。

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