経営コラムColumn

「生活産業のユーザー代理業」への発想転換のすすめ

シェアを拡大するには、成長市場では新規開拓(市場シェア)が重要ですが、成熟市場ではリピート増大(顧客シェア)が重要です。このような考えから、新車ディーラー(カーディーラー)業界でも国内新車販売が縮小に転じた1990年代から顧客生涯価値(1人の顧客が企業にもたらす価値)を高めることに注力してきました。

具体的には、クロスセル(用品、割賦、保険)、アップセル(代替)、アフターマーケット(点車検、カーケア、下取・買取、中古車)、紹介(併有車の入庫代替)などの収益機会に注力し、カー用品店、中古車販売店、車買取店、車検チェーンなどに奪われていた需要をいくばくか奪還してきました。現状では、収益商品(用品、割賦)や代替機会(保険、点車検)は健闘しているが、リピート紹介や車買取はまだまだ不十分だと感じます。

その根本要因は、新車ディーラー(カーディーラー)のパラダイムが「メーカー代理業」から「ユーザー代理業」に転換できていないことにあります。お客様のご要望に対して「その商品は、当社では取り扱っておりません」とお断りするのがメーカー代理業の発想です。「新車販売につながらないからやめておこう。手間がかかるからやめておこう。」という意識が邪魔をしています。

逆に「お客様が喜ぶことなら何でもやろう」と考え行動するのがユーザー代理業の発想です。新規事業のチャンスとして捉えて注力すれば、事業領域を拡大し、企業の成長力を高めることができます。

絶対にノーとは言わない百貨店として有名な米国のノードストロームは、そもそも取扱いの無いタイヤの返品にも応じたり、隣の百貨店で買ったサイズ違いの靴でも交換したりしています。また、感動を呼ぶホテルとして有名なリッツカールトンは、お客様に喜んでもらうために全力を尽くす文化を育んでいます。これらの企業では、ここでいうユーザー代理業の文化が浸透しています。

本稿では、「生活産業のユーザー代理業」へパラダイムを転換し、事業領域を拡大するためのヒントをご紹介します。

生活産業の成長ビジネス

2000年以降、カーブス(女性向け)やエニタイム(格安24時間)などのフィットネスが急成長しました。いずれもフランチャイズ展開していますが、収益力が高く、既存店オーナーが新規枠を確保し、加盟店募集はほぼ終了しています。

また、フィットネス以外にも、幼児教室やコインランドリー、便利屋なども成長しています。新車ディーラー(カーディーラー)であれば、いずれも投資可能な事業ですが、私の知る限り、ほとんど参入していません。先述の「新車販売に直接つながらないからやめておこう」とのパラダイムが邪魔しているとしか思えません。

新車ディーラー(カーディーラー)にお勧めの生活産業

新車ディーラー(カーディーラー)の顧客構造も少子高齢化が進んでいます。子育て世代との接触を増やすには、結婚相談所や幼児教室がお勧めです。「私どものグループ会社で幼児教室を始めました」と新車ディーラー(カーディーラー)のお客様にご案内すれば、「孫が生まれるから娘夫婦に紹介するよ」と紹介がもらえます。

また、遊休不動産(スペース)があるならば、コインランドリーがお勧めです。未納客でも、ついでに点検、オイル交換などの需要を取り込めます。
さらに、車の代替も難しくなるシルバー世代(70歳以上)が多いなら、便利屋の「まごころサポート」がお勧めです。地域密着型で「ちょっと手伝って欲しい。どこか良い業者さんを紹介してくれない。」といったニーズに対応する新たな事業です。車が必需品の地方では、免許を返納するご高齢のお客様は不便な生活を余儀なくされます。そんなお客様に感謝される上に、利益も獲得できる面白い事業です。つまり、車を手放したらおしまいではなくなるので、引き続き、便利屋サービスをご利用いただけるようになるのです。

「お客様が喜ぶことなら何でもやろう」と発想する頭の体操のすすめ

国内の自動車保有台数もそろそろピークを迎え、縮小に転じます。これからは、従来の「自動車の周辺商品中心の顧客生涯価値向上」という既成概念を打破し、顧客基盤を活用した新規事業を検討することが重要になってきています。

次頁に、便利屋のまごころサポートを導入した自動車販売整備業様のご紹介をしています。頭の体操のつもりで、先入観を捨てて一読し、自社で何か新規事業ができないかと考えてみてください。

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