経営コラムColumn

アフターコロナを勝ち残る「顧客創造力」

アフターコロナへ向けて

コロナ禍により、新車ディーラー(カーディーラー)を取り巻く環境は大きく変化しました。2020年度の新車販売台数が、10年ぶりに470万台を下回る公算が大きくなったと報道されています。その要因の一つが、緊急事態宣言に伴う自粛生活による顧客接点の減少です。
アフターコロナにおいても、市場縮小に加えて、既存客や新規客への積極的な訪問活動が見込めない中で、競争力を強化し、厳しい経営環境を勝ち残っていくことが求められます。

「顧客創造力」とは、感謝や感動で良好な顧客関係をつくるマインド、スキル、チームワークを養う組織文化・伝承力をいいます。これにより、早期代替と紹介受注を増やすことができるのです。そのエピソードをご紹介しましょう。

<エピソード1:未来のカーライフに寄り添う>
今年、双子を出産予定で、今のセダンでは狭いと感じ、ミニバン希望のお客様。試乗では、車体の大きさに抵抗感がありました。未来のカーライフに合わせて、試乗車のセカンドシート左右にチャイルドシートを設置し、「生まれてくる双子のお子様をイメージして試乗しましょう」とお伝えし、視界の広さやバックカメラ、安全装備などの運転し易さをご理解いただきながら、ご自宅での車庫入れも試してもらいました。とても喜ばれ、「他社が安かったが、子供の話もなく、見積りと値引きの話だったので、将来を考えてくれた対応がうれしかった。これからも末永く、よろしくお願いします。」と言ってもらえ、成約となった上に、ご友人を何人も紹介してくれる関係になりました。

<エピソード2:最善を尽くす>
ある日曜日の午後、ミニバンで隣県にコンサートに出かけたお客様から、会場で車のスマートキーを紛失されたと連絡がありました。引継客で面識はありませんでしたが、「キーがないと帰れない」と大変お困りの様子でしたので、何とか力になれないか、周囲に相談しました。JAFや最寄ディーラーでは解決できず、実家のスペアキーを届けるしかないと分かりました。しかし、その日は納車や入庫が立て込んでおり、往復4時間の隣県に届ける余裕はありませんでした。悩んでいると、ベテランスタッフから「運送業の親しいお客様がいるので、キーを運んでもらえるようにお願いしよう」と動いてくれました。そのお客様は別の仕事がありましたが、仕事仲間に電話してもらい、休日だった同業者の方が運んでくれました。後日、お客様が菓子折りを持って来店され、「キーを運んでくれた方からも事情を伺いました。私のための本当に多くの方々が動いてくれて感激しました。本当にありがとう。これからもお世話になりますね。」と感謝のお言葉を頂戴しました。

<エピソード3:信頼を勝ち取る>
既存法人から子会社が工場を新設することを教えてもらいました。その立地から車が必要になるのではと考え、紹介を依頼すると「いつも当社のことを考えた提案をもらっているから」と快諾してもらいました。紹介先に訪問すると、これまではレンタカーだったとのこと。今後の移動範囲や予想される用途を伺い、多走行、雪道の安全性能などを考慮し、レンタカーとのコスト比較とともに提案したところ、納得してもらいステーションワゴンを受注。「熱心に調べてくれて、ありがとう。あなたなら信頼できる」と工場の休憩室に出入りさせてもらうようになりました。工場の方々とも親しくなり、お悩みやお困りごとの相談にのって、できる限り解決できるように動いていると、「おもしろい営業スタッフ」と評判になり、次々と受注できるようになりました。

このような顧客創造力の高いスタッフを育成するには、経営理念の浸透へ向けて、経営幹部が本気でリーダーシップを発揮することと、その理念が共感され、実践される教育研修、評価制度の整備が重要ですが、実現できていない新車ディーラー(カーディーラー)が多くあります。
その理由を新車ディーラー(カーディーラー)の組織運営の歴史とともに振り返ってみましょう。

新車ディーラー(カーディーラー)の組織運営の歴史と問題点

1990年までの市場成長期の組織運営は、指示命令型が効果的・効率的でした。
その後、1995年頃以降に成熟市場となるとCSとコンプライアンスを重視するようになり、2010年頃からESも重視するようになりました。
その後、今日に至るまで、経営理念や教育研修、評価制度が見直され、CSは「クレームやトラブルを減らす」ことから「お客様との信頼関係構築」に、ESは「従業員の不満を減らす」ことから「会社との信頼関係構築」に変化してきました。

しかし、理念と業績を両立して追求する、期待を超える顧客満足で業績成果を上げるという考えが欠如しているため、社員の共感が得られずに理念は実践されず、CSやESも高まらない状況となっています。
また、スタッフのロープレ訓練も商品説明やメリット訴求に重点が置かれているため、現場では一方的なプレゼンが多く、お客様のニーズやカーライフを捉えた楽しい商談とならないのです。

「顧客創造力診断」の事例

ある新車ディーラー(カーディーラー)は、理念の浸透に熱心で、しっかりと磨かれた理念が策定され、毎朝の唱和、スタッフの1分間スピーチ、お客様からの感謝の声の共有などが実施されていました。また、役職別の行動指針に落とし込まれ、育成面談で指導される仕組みもありました。
しかし、経営者は、「ここまで頑張っているが、手応えが感じられない」と悩んでおり、診断を受けた結果、以下のような実態が浮かび上がってきました。

<診断総括(一部抜粋)>

  1. 理念の浸透に力を入れているものの、経営陣の業績偏重の言動が多いため、現場の共感が得られず、実践されない。また、評価制度と連動していない。
  2. 経営陣の方針書レビューが多頻度にあるが一方的な押し付けのため、マネージャーの主体性を削いでいる。また、その進捗フォローがないのでスタッフは忘れている。
  3. 経営陣や本部から要求される報告物が多いため、方針展開が中途半端になることが多い。また、マネージャーが業務の意義や目的を伝えず、フォローも不足しているため、スタッフは「やらされ感」で疲弊している。
  4. マネージャーは、身勝手なスタッフが機嫌を損なうのを気にして叱れない。スタッフは、マネージャーからのコミュニケーションが一方的だと不満に思い、素直に指示に従わない。その結果、人材育成のベースとなる信頼関係が希薄となっている。
  5. ロープレ研修は、トークスクリプトどおりにできたスタッフが評価され、期待を超える顧客満足で感動を与え、リピート紹介を増大させる商談訓練がされていない。店長は、ホット案件レビューでスタッフの情報収集が浅く、ニーズの捉え方が甘いと感じている。

この診断結果を受け、経営陣は以下のような改善策を実施することにしました。

  1. 理念と業績を両立して追求する考えや姿勢のベンチマーク事例を異業種も含めて学ぶ。
  2. 経営幹部の思考力、コミュニケーション力を鍛え、リーダーシップを強化する。
  3. 営業スタッフの感動提案力を鍛え、成功体験を積ませることで顧客対応力を強化する。
  4. 理念実現のための教育研修を見直し、評価制度と連動させる。

「顧客創造力診断」のすすめ

当社では、以下の4つの観点から「顧客創造力」を実現する課題を鮮明にし、その解決策を提示する診断を開発しました。

  1. 経営理念の浸透度と事業展開力
  2. 経営幹部のリーダーシップ(ビジョン推進力、方針展開力、人材育成力)
  3. スタッフの顧客対応力(仕事観・姿勢、共感力、提案力)
  4. 適切な教育研修・評価制度

 自社の「顧客創造力」を診断してみてはいかがでしょうか。

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