些細なものごとに煩わされないために必要なのは、力点を動かすこと、つまり新しい、そしてポジティブな視点を心の中に持つことだ。デール・カーネギー
ベストセラー「人を動かす」が、世界で1500万部以上を売り上げているカーネギーの名言です。ネガティブ感情の視点を変え、ポジティブ思考に転換することの大切さを教えてくれます。
ネガティブな感情や思い込みは、誰にでも生じるものですが、それを冷静に受け止め、視点を変えれば、ポジティブに考えられるようになります。自身の人間的な成長だけでなく、部下育成でも同じです。
私が担当した営業スタッフの商談研修のエピソードです。
4年目の田中さんは、「自信がない」が口癖で、お客様から知らない話題が出ると強引に違う話題にしてしまうので、会話が盛り上がらず、親しいお客様も少なく、業績も低迷していました。
店長から、「趣味や家族の話題で盛り上がって、仲良くならないと可愛がってもらえなし、提案も受け入れてもらえない」と指摘されていましたが、どうしたらよいか分からずに悩んでいました。
そこで、私が知らない話題を避ける理由を確認すると「知らないことは恥」と思い込み、ネガティブな自尊心が邪魔していたことが明らかになりました。
続いて、私から以下をアドバイスしました。
「『知らないことは恥』の思い込みを『知らないことは成長への機会』とポジティブな発想に転換する必要があります。お客様に、『詳しくないので教えてください』と素直に伝えれば、多くのお客様は、趣味や家族の話を嬉しそうに話してくれます。
さらに、聴いた趣味について、次の面談までに勉強した上でもう少し詳しく話をすれば、『あの時の話を覚えていてくれて、調べてもくれたの』とお客様も喜んでくれるし、同じような趣味のお客様にも活かせるようになります。
また、自身の知識が増え、親しいお客様も増えれば、成長したと実感し、自信にもつながると思いませんか。知らないことは自身の見識を高め、お客様と仲良くなるチャンスなのです。」
このアドバイスを受けた田中さんは、「明日から早速、実践してみます」と悩みが吹っ切れた様子で、明るい表情に変わりました。
実商談では、お客様が笑顔で色々と教えてくれ、会話も盛り上がり、受注につながることが増え、その成功体験もあって、商談試験も合格できました。修了時には、「試験に合格できたことは嬉しいですが、何よりも自信を持って商談に臨めるようになったのが最大の財産です。」と晴れ晴れとした表情で話しました。
その後、田中さんは、親しいお客様を増し続け、受注も伸びました。
ネガティブ感情や思い込みのあるスタッフの発想を転換して成長を促しましょう。