まず信頼。結果は後からついてくる。瀬戸 雄三
アサヒビール7代目社長の瀬戸氏は、シェア9パーセントのどん底から、スーパードライ発売後の復活劇を営業本部長として陣頭指揮し、1992年に21年ぶりの生え抜きの社長に就任。1998年には、45年ぶりにビールのシェアを40.9%の業界首位に引き上げ、その経営手腕で注目を集めました。彼は、お客様や部下との関係で、何よりも「信頼」を大事にしていました。
私もコンサルタントとして経験がありますが、リーダーとして、組織を動かす第一歩は、部下との信頼関係を築くことです。
信頼関係があれば、言葉が拙くても想いは伝わりますが、信頼関係がなければ、たとえ話が上手でも想いは伝わりません。信頼していない上司に頭ごなしに正論を言われても腹が立ちますが、逆に、信頼があると多少無理でも、「何とかしましょう」と言ってもらえるのです。
優秀なリーダーは、部下との信頼関係を築き、自身の想いを伝え、ビジョンや目標を達成していますが、部下との信頼関係を築けていないリーダーは、部下が思うように動かない。仕事の指示と報連相で動くと勘違いしているのです。
当社のリーダー研修では、部下との「十分なコミュニケーション」、「思いやり」についてアンケートを取りますが、部下が動かないリーダーは、これらの点数が低いのです。
私から、「あなたは部下から信頼されていない。だから、部下は動かないのです」と指摘すると、はっとした表情になりますが、「どうしたよいかわからない」と言うのです。
そこで、部下との信頼関係を築くには、「相互理解」が必要で、自身の生き様や価値観を開示しながら、部下の趣味や家族、夢や悩み、生き様を知ることが必須と教えます。
すると、相互理解に取り組んだリーダーからは、様々なうれしい報告が届きます。「自分が思っていた以上に部下が色々なことを話してくれた」、「10年以上の付き合いだが、知らないこともたくさんあった」、「目が合うと視線をそらしていた部下が、笑顔を見せるようになった」などです。
そして、「部下との信頼関係は高まってきましたか?」と聞くと、「確実に良くなっていると実感しますし、業務も円滑に進むようになってきました」と笑顔で答えてもらうことが数多くあります。
部下を深く知り、信頼関係を築けているかを顧みてはいかがでしょうか。