寛厳自在(かんげんじざい) 指導者には適度の厳しさとやさしさが必要である松下幸之助
「やさしいばかりでは、人びとは甘やかされて安易になり成長もしない。かといって厳しい一方では畏縮してしまったり、うわべだけ従うというようになってのびのびと自主性を持ってやるという姿が生まれてこない(中略)恩威あわせ持つ、いわゆる寛厳よろしきを得るということが大切なわけである」
やさしいだけの人は、「嫌われたくない」との気持ちが強い。厳しいだけの人は、不機嫌で怒りっぽいか、育成責任を忘れ自分を監視役と勘違いしている。根本は、いずれも身勝手で部下との信頼関係が希薄なのだと思います。
会社の統廃合で社員が畏縮し、一体感がない会社で「称賛や感謝の機会を増やす活動を展開しているが、今一つ活性化しない」との悩みをお伺いすることがあります。これらの活動も信頼関係が希薄な職場では表面的な取組に終わることが多いので、「生き様インタビューによる信頼関係づくり」をお勧めしています。私は、この手法を父親から学び、経営コンサルタント、管理職として磨いた後に、社内外を問わず、経営者、管理職、営業職など多くの人に伝えています。
生き様インタビューとは、「生い立ち、前職、苦労話や自慢話、関心事や悩み、将来の夢、尊敬する人物、信念」などを聴くのです。目的は、相手の生き様や価値観を受容し、共感点を見つけることにあります。同郷、同窓、知人、趣味などの共通点が見つかると、親しみが一気に増します。また、気難しい相手でも、一つでも共感できると、うちとけることができます。
信頼関係が強いと、褒め言葉も心から嬉しいし、厳しい指摘も素直に受けとめてくれます。しかし、信頼関係が希薄だと、褒め言葉はよそよそしいし、厳しい指摘には反発します。
私は、27歳で九州支店長(部下10名)、29歳で首都圏営業部長(同30名)として、トラブルが多くバラバラになった組織を再建してきました。
福岡から東京へ異動する際、「なぜ私なのですか?」と社長に尋ねると、「あなたには求心力があるから頼む」と言われました。当時は、ピンとこなかったが、今思えば、生き様インタビューによる信頼関係づくりが役に立っていたのだと思います。
皆様も、主体性の高い人材を輩出する健全な組織をつくるために、部下との信頼関係強化と寛厳自在の指導に挑戦してみてください。